相続税額の計算表を見れば今の財産でいくら払うかわかりますか?
基礎控除を引いた額を計算表に当てはめればおおよその税額がわかります。
相続税の計算は、遺産総額から基礎控除を差し引いた「課税遺産総額」に税率をかけて行います。大まかな金額であれば、早見表を使ってすぐに把握することが可能です。しかし、正確な計算には財産の評価や特例の適用が絡むため、単純な計算表だけでは完結しないことも多いでしょう。ここでは、2026年時点の最新情報を基に、相続税の計算手順や早見表の見方について、分かりやすく解説していきます。
相続税額の計算手順の全体像
大切なご家族を亡くされ、深い悲しみと不安でいっぱいの中、複雑な税金のことまで考えなければならないのは本当に大変ですよね。まずは落ち着いて、税金計算の全体像を把握することから始めましょう。全体的な計算手順は以下の通りとなります。
- 遺産総額の確定
- 基礎控除の差し引き
- 各相続人の税額計算
- 実際の取得割合で合計
第一段階はすべての財産を洗い出すこと
一番最初に行うのは、被相続人(亡くなった人)が残した財産の全体額を正確に算出することです。銀行預金や自宅の土地建物といったプラスの財産はもちろん、残っていた借金や葬儀費用といったマイナスの財産もすべて書き出しましょう。プラスからマイナスを差し引いて、純粋な遺産総額を確定させます。
プラスの財産として数えられるもの
プラスの財産には、現預金や有価証券、不動産などが含まれます。さらには、亡くなったことで受け取る死亡退職金や生命保険金なども、一定の非課税枠を超えた部分は財産としてカウントしなければなりません。漏れがないように、通帳や保険証券を丁寧に確認していきましょう。
マイナスの財産として引けるもの
マイナスの財産として差し引けるのは、住宅ローンなどの借入金、未払いの税金や医療費などを含みます。また、お通夜や告別式にかかった葬式費用もマイナスできる項目です。これらをしっかり差し引くことで、無駄な税金の支払いを防げるでしょう。領収書は必ず保管しておいてください。
第二段階は基礎控除を引くこと
次に、確定した遺産総額から基礎控除額を引き算します。残った金額が、税金がかかる対象となる「課税遺産総額」と呼ばれるものです。計算の結果、課税遺産総額が基礎控除の枠内に収まっていれば、相続税は一切かかりません。大半のご家庭がここで課税対象外となり、安心されます。
基礎控除の正しい計算方法
基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式を活用してください。法定相続人とは、民法という法律で定められた、財産を引き継ぐ権利を持つ人のことです。配偶者や子どもが該当することが多く、人数が増えればそれだけ非課税の枠が広がっていきます。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
一般的には法定相続人を数えるだけと言われますが、実務の現場では、養子縁組や代襲相続(本来の相続人が亡くなっている場合)の扱いでつまずくケースが意外と多いです。当事務所の過去の事例でも、基礎控除の計算を誤って申告不要と勘違いし、後から税務署から指摘を受けて慌てる方がいらっしゃいました。
第三段階は各相続人の仮の税額計算
基礎控除を引いて残った課税遺産総額を、法定相続分で分けたと仮定して、各人の仮の取得金額を算出しましょう。法定相続分とは、法律で定められた遺産の取り分の目安の割合です。その金額を後で紹介する速算表に当てはめ、全員の税額をいったん計算します。ここが少し複雑に感じるかもしれません。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
教科書的な回答は以上の通りですが、実際の遺産分割割合でそのまま速算表を使ってしまい、全く違う税額を計算してしまうという失敗がよくある失敗例と言えるでしょう。当事務所でも、仮の分割で計算するという手順を飛ばしてしまい、税額を過大に見積もってパニックになるご相談を頻繁に受けます。順番を守ることが大切です。
第四段階は実際の取得割合で税額を分ける
仮計算した全員分の税額を合算して相続税の総額を導き出しましょう。その後、実際に遺産を分けた割合に応じて、各相続人に税額を割り振っていきます。これでようやく、各人が納めるべき本当の納付額が決まる仕組みとなっています。面倒に感じるかもしれませんが、順を追って計算していきましょう。
▷関連:相続税はいくらかかる?基礎控除の計算や節税方法はありますか?
税額を把握できる2つの計算表
計算の流れが分かったところで、実際に数字を当てはめるための表を見ていきましょう。手元に財産のメモを置きながら、ご自身の状況と照らし合わせて確認してみてくださいね。
細かく計算するための速算表
ステップ3で使用する、税率と控除額を一覧にまとめたものが速算表となります。仮に割り振った法定相続分に応じた取得金額に対して、以下の税率を適用して計算してみてください。2026年時点の最新の速算表は以下の通りです。税率が段階的に上がっていく仕組みになっています。
下表に、法定相続分に応じた取得金額に対する税率と控除額をまとめました。
| 課税遺産総額(法定相続分) | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
速算表の具体的な見方と使い方
計算例を見てみましょう。たとえば、法定相続分に応じた取得金額が4,000万円だったとしましょう。この場合「5,000万円以下」の区分を見ます。4,000万円に税率20%を掛けて800万円。そこから控除額200万円を引くことで、600万円という仮の税額が算出できるわけです。電卓があればすぐに計算できますね。
おおよその目安がすぐわかる早見表
細かい計算は面倒という方は、財産総額と子どもの数だけで目安を知ることができる早見表が便利です。この表はすでに基礎控除を差し引いた額から算出されています。大まかな数字だけでも分かると、心の準備ができて安心につながるのではないでしょうか。
下表は、相続人が子のみで、財産が均等に分割された場合の合計相続税額(単位:万円)の概算です。
| 財産総額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 | 子4人 |
|---|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 40 | 0 | 0 | 0 |
| 5,000万円 | 160 | 80 | 20 | 0 |
| 7,500万円 | 580 | 395 | 270 | 210 |
| 1億円 | 1,220 | 770 | 630 | 490 |
| 1.5億円 | 2,860 | 1,840 | 1,440 | 1,240 |
| 2億円 | 4,860 | 3,340 | 2,460 | 2,120 |
| 3億円 | 9,180 | 6,920 | 5,460 | 4,580 |
配偶者がいると税金は大きく減る
上記の早見表は、子どもだけが相続する前提で作られたものです。もし配偶者がご存命で相続人に含まれる場合、税額は表の金額よりもさらに低くなります。長年連れ添った配偶者のその後の生活を守るため、税制にも特別な配慮が組み込まれた仕組みと言えるでしょう。
▷関連:自分で相続税の計算をして税務署に申告することはできますか?
基礎控除の目安と特例による注意点
計算表を正しく活用するためには、人数ごとの基礎控除の目安や、適用できる特例の存在を正確に知っておく必要があります。これらを知らないと損をしてしまうかもしれません。
法定相続人数ごとの基礎控除額の目安
基礎控除額を間違えると、最初の計算から全て狂ってしまうでしょう。下表に目安を示しますが、法定相続人が1人の場合は3600万円、2人なら4200万円、3人なら4800万円、4人なら5400万円となります。法定相続人の人数が増えるほど非課税の枠は広がっていきます。
以下の表は、法定相続人の数ごとの基礎控除額の目安です。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
強力な味方となる配偶者の税額軽減
配偶者には、1億6000万円、または法定相続分のいずれか多い金額まで無税になるという強力な特例が用意されています。つまり、配偶者が引き継ぐ分には、かなり高額な財産であっても実質的に税金がかからない仕組みと言えるでしょう。
未成年者控除や障害者控除の適用
相続人が未成年者や障害者の場合、一定の要件を満たせば、算出された税額からさらに一定額が差し引かれます。こうした控除の制度を漏れなく使うことで、実際の納付額を大きく減らすことが可能です。ご家族の負担を減らすためにも忘れずに確認しましょう。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
一般的には特例を使えば税金が安くなると言われますが、実務の現場では、必要書類の不備で手続が止まることや、適用要件を満たさずに後から否認されるケースが意外と多いです。当事務所では特例適用の可否を慎重に判断する専門家の紹介が可能です。自己判断で適用するのは避けておくのが無難でしょう。
中小企業オーナーにとっての株式の評価
ここまでは一般的な財産のお話でしたが、中小企業の経営者の方にとっては、自社株式の評価という非常に難解な問題が立ちはだかります。これこそが、計算表だけでは対応しきれない最大の要因です。
自社株は予想以上に高く評価される
ご自身が経営する会社の株式は、現金のようには目に見えません。しかし、業績が良い会社ほど、自社株の相続税評価額は跳ね上がります。手元に現金がないのに高額な税金を課される恐れがあるため、事前の対策が絶対に欠かせません。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
一般論として自社株の評価は複雑と言われますが、実務の現場では、過去の決算書や類似業種のデータ等を集めるだけで数ヶ月かかるケースも珍しくありません。当事務所の事例でも、評価の手続が間に合わず、期限間近で慌ててご相談に来られる経営者の方を多数見てきました。早めの着手が肝心です。
その他の相続税額の計算表に関するFAQ
相続税の計算や表の使い方について、皆様からよく寄せられる疑問にお答えします。少しでもモヤモヤした気持ちを取り除いてくださいね。
計算表に基づく概算はあくまで目安に過ぎません。実務の現場では、不動産や株式の評価で素人の計算はほぼ確実にズレます。そのまま申告して過少申告になれば、後日ペナルティを受ける恐れがあります。最終的な税額計算は、プロフェッショナルである税理士に任せるのが一番安心です。
早見表の枠に該当しない財産額の場合は、先に紹介した「4つのステップ」に沿って、速算表を使いながらご自身で計算式に当てはめてみてください。とはいえ、実際の税額は財産の種類や特例によっても細かく変動するため、出てきた数字は一つの目安として捉えておきましょう。
銀行からの借入金や未払いの医療費のほか、お葬式にかかった費用も遺産総額から引くことができます。しかし、香典返しや墓地の購入費などは対象外です。実務上、控除できる費用の線引きを間違えて税金を払いすぎる方が非常に多いので、注意して分類してください。
遺産の総額が基礎控除額に完全に収まっていれば、原則として申告も納税も必要ありません。しかし、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を使って結果的に税額をゼロにする場合は、申告書を提出しなければ特例が認められません。ここを勘違いしないよう気をつけてください。
相続の問題は税理士に相談
計算表を使えば大まかな目安はわかりますが、財産評価や特例適用の判断を誤ると、税務調査で重いペナルティを課されるリスクがつきまといます。取り返しのつかない失敗を防ぐためにも、自己判断での手続は避けましょう。正しい手続で安心を得るために、まずは相続実務に精通した税理士へ相談することをおすすめします。
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