遺産3000万以下の相続なら申告は不要で合っていますか?

相続税の基礎
遺産3000万以下の相続なら申告は不要か、基礎控除の仕組みと判断基準を解説します。

遺産総額が3600万円以下であれば相続税の申告は原則不要です。

遺産を引き継ぐ際、遺産の正味の合計額が基礎控除額という枠に収まれば相続税はかかりません。税務署への申告手続も不要として扱われます。基礎控除額の最低ラインが3600万円に設定されていることがその理由。大変ですが、一つずつ進めれば大丈夫です。

基礎控除額が申告要否の重要な基準

相続税が課税されるかどうかを判断するためのボーダーラインが基礎控除額にあたります。遺産の総額がこの金額を下回っていれば、そもそも税金を支払う義務は生じません。申告書の提出も不要というわけです。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的には遺産が少ないから申告しなくてよいと言われますが、税理士の実務では思わぬ財産が見つかるケースが意外と多いと感じます。預貯金や不動産だけでなく、手元に置かれた現金や貸付金なども漏れなく拾い上げることが大切です。

法定相続人が1人の場合は最低3600万円が非課税

基礎控除額は残された家族の人数によって変動します。もっとも人数が少ない法定相続人1人の場合でも、3600万円までは税金がかからない仕組みです。ご家族が多ければ、さらに大きな額が非課税として扱われることになります。

基礎控除額の具体的な計算式

基礎控除額を求めるには所定の計算式を用います。以下の表に人数の目安をまとめました。 基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人の人数別の目安を以下の表に示します。

法定相続人の数基礎控除額
1人3600万円
2人4200万円
3人4800万円
4人5400万円

法定相続人の正しい数え方

法定相続人とは、民法の定めに従って遺産を受け取る権利を持つ人のことです。配偶者は常に相続人となります。血族には優先順位があり、子ども、父母、兄弟姉妹の順で権利が回っていく仕組みをとっています。

養子縁組をした場合の人数制限

被相続人と養子縁組をした方も法定相続人に含まれます。ただし、基礎控除額の計算に含めることができる人数には上限が設けられています。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までという決まりです。

相続放棄をした人がいる場合の扱い

プラスの遺産よりマイナスの借金などが多い場合、相続放棄を選択することがあります。この手続をした人がいても、基礎控除額を計算する際の法定相続人の数にはその方を含めて計算して問題ありません。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

当事務所の過去の事例では、亡くなった方より先にお子様が亡くなられており、お孫様が代襲相続人となるケースがよくありました。親族関係が複雑な場合、戸籍をさかのぼって正確な人数を把握することが不可欠です。

遺産総額の正確な計算手順

申告が不要かどうかを見極めるには、遺産の総額を正確に計算しなければなりません。現金や不動産だけでなく、すべての財産を金銭的な価値に換算して合算する作業が求められます。

プラスの財産をすべて洗い出す

被相続人が亡くなった時点で所有していた財産をすべて書き出します。現預金、土地や建物といった不動産のほか、株式や自動車、美術品や骨董品なども対象です。細かいものも忘れずにリストアップしましょう。

みなし相続財産を加算する

死亡保険金や死亡退職金は、民法上の遺産ではありませんが税務上はみなし相続財産として扱われます。それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が用意されています。これを超えた部分だけを遺産総額に加えるルールです。

マイナスの財産を差し引く

プラスの財産から差し引けるマイナスの財産もあります。被相続人が残した借入金や未払いの税金、ご家族が負担した葬儀費用などが該当します。これらを差し引いた残りが課税対象となる正味の遺産額。漏れなく確認してください。

生前贈与された財産の持ち戻し

亡くなる前一定期間内に家族へ贈与した財産は、遺産に足し戻して計算する決まりがあります。現在は亡くなる前3年以内ですが、2027年以降の相続からは段階的に7年以内まで延長されていくため注意が必要です。

特例を使わなくても相続税の申告が不要な場合

遺産総額が基礎控除額の範囲内に収まる場合、申告書の提出は必要ありません。複雑な書類を作成する手間が省けるため、ご遺族の負担は大きく軽減されます。各種名義変更の手続だけに専念できるでしょう。

障害者控除や未成年者控除を適用する場合

遺産が基礎控除を超えていても、一定の税額控除を適用して税額がゼロになれば申告不要です。85歳未満の障害者に対する障害者控除や、18歳未満の方に対する未成年者控除がこれにあたります。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

専門家の視点では、相次相続控除を適用して税額がゼロになる場合も申告不要とされています。短期間で立て続けに相続が起きた場合の救済措置。これを利用して負担を減らせるか確認しておくのが無難です。

相続税がゼロでも申告が必要なケース

納税額がゼロだからといって、必ずしも申告が不要とは限りません。特定の制度を利用して税額を下げる場合は、税務署に申告書を提出してはじめて適用が認められる仕組みになっています。

小規模宅地等の特例を適用する場合

亡くなった方の自宅の土地などを引き継ぐ際、一定の要件を満たすと土地の評価額を最大80%減額できる制度があります。これを小規模宅地等の特例と呼びます。非常に有利な制度ですが、適用には申告が必須条件です。

配偶者の税額軽減を適用する場合

配偶者が遺産を受け取る場合、最低でも1億6000万円までは非課税となる特例があります。配偶者の税額軽減と呼ばれるこの制度を利用して税額がゼロになるケースも、必ず申告期限までに申告書を提出しなければなりません。

その他の申告が必要な特例

ほかにも適用に申告が求められる制度が存在します。農業を続けるための農地の納税猶予の特例や、財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例などです。利用を検討する際は申告漏れがないよう気をつけましょう。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

税務調査のリスクを考えると、特例を使ってゼロ円申告をする際は関連書類を丁寧に整えておくべきです。当事務所の事例でも、遺産分割協議書の不備で特例が認められず、手続がやり直しになるケースがありました。

申告が不要でも名義変更等の手続は必要

税務署への申告が不要なケースでも、財産の持ち主を変更する手続はご自身で行わなければなりません。これを放置すると、後々不動産を売却できないなどのトラブルに発展する可能性があります。

凍結された銀行口座の解約と名義変更

金融機関は口座名義人の死亡を知ると口座を凍結します。お金を引き出せるようにするには、戸籍謄本や遺産分割協議書を銀行に提出して解約や名義変更の手続を行う必要があります。トラブルを避けるためにも早めの着手を。

法務局での不動産の相続登記

土地や建物を引き継いだ場合は、法務局で相続登記を行います。2024年4月から相続登記は義務化されました。不動産の取得を知った日から3年以内に手続を済ませないと過料が科される恐れがあるため要注意です。

株式や自動車の手続

証券会社に預けている株式や投資信託も、相続人名義の口座へ移管する手続が必要です。自動車を引き継ぐ場合も陸運局での名義変更が欠かせません。漏れなく進めていきましょう。

税務署からお尋ねの文書が届いた場合の対応

相続が発生してから数ヶ月後、税務署から「相続税についてのお尋ね」という郵便物が届くことがあります。これは申告の要否を確認するための文書です。基礎控除以下で申告が不要な場合でも、無視せず対応しなくてはなりません。

回答書への記入と提出方法

お尋ねの文書には、申告要否を検討するための回答用紙が同封されています。遺産の概算額を計算し、基礎控除額を下回っているため申告義務がない旨を記入して税務署に返送してください。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

教科書的な回答は「お尋ねが来たら素直に書いて返す」ですが、税理士の実務では、数字の根拠を裏付ける資料を手元に保管しておくようアドバイスしています。後から税務署に説明を求められた際に慌てずに済むからです。

3000万以下の相続なら申告は不要に関するFAQ

Q1:申告が必要なのにしなかったらどうなるの?

申告期限である「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」を過ぎてしまうと、本来の税金に加えてペナルティが科されます。無申告加算税や延滞税といった重い罰金が発生するため、期限内の申告と納税を心がけてください。

Q2:家族名義の預金も遺産に含まれるのですか?

亡くなった方が資金を出し、実質的に管理していた口座は名義預金と呼ばれます。配偶者やお孫さんの名前になっていても、税務上は被相続人の遺産として扱われる仕組みです。これを見落とすと過少申告になるため注意しましょう。

Q3:期限内に遺産の分け方が決まらない場合は?

申告期限までに遺産分割が終わらないと、配偶者の税額軽減などの有利な特例が使えません。いったん法定相続分で分けたと仮定して申告と納税を済ませ、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくことで後から特例を適用できます。

相続の不安は税理士へ相談を

相続税の計算や財産の評価は複雑であり、自己判断で申告不要と決めつけるのは税務リスクを伴います。2026年4月時点の税制に基づく一般的な内容を解説しましたが、個別の状況に応じた確実な判断を求めるなら、専門家である税理士への相談を強く推奨します。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)