相続で不動産を取得したら不動産取得税はかかりますか?

相続税の基礎
相続で不動産を取得したときの不動産取得税とは何か、原則として非課税になる仕組みについて解説します。

親族からの相続で不動産を取得した場合、原則として不動産取得税はかかりません。

相続はご自身の意図による取得ではなく、法律上の自然な権利の移転とみなされるためです。被相続人からの取得であれば税金は発生しません。ただし、一部の例外では課税されることがあるため注意が必要です。

相続の基本と不動産取得税の関係

ご家族が亡くなり、悲しみの中で慣れない手続に追われていると、税金のことが心配になりますよね。大変ですが、一つずつ進めれば大丈夫です。まずは不動産取得税の基本的な仕組みと、相続との関係について整理しておきましょう。

不動産取得税とはどのような税金か

不動産取得税は、土地や家屋といった不動産を新たに取得した際に、その所在地の都道府県に納める地方税です。不動産の購入や家屋の建築、生前贈与を受けた場合など、有償や無償を問わず一度だけ課税される仕組みになっています。

自然な権利の移転とみなされる相続

一方で、相続によって不動産を取得した場合は、原則として不動産取得税は課税されません。これは、被相続人の財産をそのまま引き継ぐ行為であり、新たな不動産の取得というよりも自然な権利の移転であると法的に解釈されるためです。

法定相続人が受け取る場合は安心

被相続人の配偶者、子供、親、兄弟姉妹など、民法で定められた法定相続人が不動産を受け継ぐ限り、不動産取得税の心配は不要。複雑な計算や申告の手間も省けるため、まずは誰が法定相続人になるのかを確認することが重要です。

遺産分割協議で単独で取得したケース

法定相続人が複数いる場合、全員の話し合いである遺産分割協議を行って、誰か1人が実家や土地を単独で引き継ぐことがよくあります。このように代表して1人が不動産を相続した場合であっても、不動産取得税はかかりません。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的には遺産分割協議で誰が不動産を取得しても非課税と言われますが、税理士の実務の現場では、一度手続を終えた後に遺産分割をやり直すケースが意外と多いです。この場合、相続ではなく相続人同士の「贈与」とみなされ、思わぬ税金がかかることがあります。手続は慎重に進めておくのが無難です。

不動産取得税が課税される4つの例外ケース

相続に関連して不動産を取得したとしても、その手続や契約の性質によっては、例外的に不動産取得税が課税される場合があります。どのようなケースで税金が発生するのか、以下の表にまとめましたのでご確認ください。

取得の原因法定相続人が取得した場合法定相続人以外が取得した場合
相続課税されない該当なし
包括遺贈課税されない課税されない
特定遺贈課税されない課税される
死因贈与課税される課税される

遺言で指定する特定遺贈の注意点

被相続人が遺言書で「この土地をAさんに譲る」と特定の不動産を指定して譲ることを「特定遺贈」と呼びます。この特定遺贈で不動産を受け取る人が法定相続人以外であった場合、不動産取得税が課税されてしまいます。

財産の割合を指定する包括遺贈

一方、遺言書で「全財産の3分の1を譲る」というように割合を指定する「包括遺贈」の場合、受け取る人は法定相続人と法的に同じ立場に。そのため、法定相続人以外が不動産を取得したとしても、不動産取得税はかかりません。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

当事務所の過去の事例では、法定相続人以外に財産を遺したい場合、特定遺贈ではなく包括遺贈を選択することで不動産取得税を回避したケースがあります。ただし、包括遺贈はマイナスの財産も引き継ぐことになるため、遺言内容の作成には専門家の見極めが不可欠です。

亡くなることを条件とする死因贈与

「私が亡くなったらこの家をあげる」というように、生前に被相続人と受け取る人との間で契約を結んでおくことを「死因贈与」と言います。これは被相続人の死亡をきっかけとしますが、法的には「贈与」の扱いとなるため不動産取得税の対象です。

相続時精算課税制度を利用した生前贈与

60歳以上の父母などから18歳以上の子や孫へ生前贈与を行う「相続時精算課税制度」を利用すると、2,500万円までの贈与税が非課税になります。しかし、この制度を使って不動産を取得した場合、不動産取得税は免除されず通常通り課税されます。

不動産取得税の計算方法と軽減措置

もし例外に当てはまり不動産取得税がかかることになった場合、どのくらいの出費になるのか不安ですよね。ここでは、計算の基礎となる評価額の調べ方や、税額を大きく減らすことができる軽減措置について詳しく解説します。

税額は固定資産税評価額をもとに計算

不動産取得税は、実際の売買価格ではなく、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている「固定資産税評価額」をもとに計算されます。毎年春に送られてくる固定資産税の課税明細書で金額を確認することができます。

土地と住宅の税率は3パーセントに軽減

本来の税率は4パーセントですが、2027年3月31日までに取得した土地と家屋については、3パーセントに引き下げられています。店舗や事務所などの居住用以外の建物については、原則通り4パーセントの税率が適用されます。

新築住宅や中古住宅の軽減措置

居住用の家屋を取得した場合、一定の要件を満たすことで評価額から大きな金額を控除可能。新築住宅なら1,200万円、中古住宅でも1982年1月1日以降に建築された等の条件をクリアすれば、築年数に応じて100万円から1,200万円が控除されます。

宅地を取得した場合の税額軽減

土地についても軽減措置が用意されています。まず固定資産税評価額が2分の1に。さらに「45,000円」か「土地1平方メートルあたりの評価額の半分 × 住宅の床面積の2倍 × 3パーセント」のいずれか高い方の金額が税額から差し引かれます。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

教科書的な回答は自動的に税金が安くなると思われがちですが、実務の現場では、都道府県の税事務所への申告が必須となる点に注意が必要です。当事務所の過去の事例でも、この申告漏れにより不要な税金を払う寸前だった方がいらっしゃいました。手続期限には十分に気をつけてください。

軽減措置を受けるための手続の流れ

不動産取得税の軽減措置を確実に受けるためには、決められた手順を踏む必要があります。以下のリストを参考にして、期限内に忘れずに手続を完了させましょう。

  1. 法務局で不動産の名義変更を行う。
  2. 都道府県の税事務所から不動産取得税の納税通知書が届くか確認する。
  3. 期限内に必要書類を添えて、軽減措置の申告書を税事務所へ提出する。

非課税の場合の申告は必要か

基本的には、相続で不動産を取得して不動産取得税が非課税となる場合、ご自身から進んで非課税申告を行う必要はありません。ただし、特殊な状況下では手続が求められることもあります。

例外的に申告が必要となるケース

被相続人が不動産を購入した直後に亡くなり、生前に不動産取得税の申告や納付が終わっていなかった場合などは、相続人が代わりに手続を行う必要があります。迷った場合は、管轄の税事務所や専門家にご確認ください。

不動産を相続したときにかかる他の税金

不動産取得税はかからなくても、不動産を相続した際には別の税金が発生することがあります。後から慌てないためにも、どのような税金がかかる可能性があるのか、全体像を把握しておきましょう。

名義変更時に必要な登録免許税

不動産の名義を被相続人から相続人に変更する相続登記の際、「登録免許税」という国税がかかります。税率は固定資産税評価額の0.4パーセントです。たとえば評価額が1,000万円の場合、4万円の税金が発生します。

未払い分の固定資産税の負担

固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課されるもの。被相続人が亡くなった年の未払い分がある場合は、不動産を引き継いだ相続人が代わりに支払う義務を負うことになります。準確定申告を行う際は経費にできる場合もあります。

一定の基準を超えると発生する相続税

被相続人の全財産の総額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要になります。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。

売却時の譲渡所得税と所有期間

相続した不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生。所有期間は被相続人が取得した日から引き継いで計算し、売却した年の1月1日時点で5年を超えていれば長期譲渡、5年以下なら短期譲渡となり、税率が異なります。

被相続人が生前に購入した不動産

被相続人が生前に購入契約を結び、まだ引き渡しを受けていない状態で亡くなった場合、その不動産を相続人が引き継ぐことがあります。この場合も、相続による権利の移転となるため、基本的には不動産取得税はかかりません。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的には生前の契約でも相続なら非課税と言われますが、実務の現場では手続の順序やタイミングによって課税の対象と判断されるケースが意外と多いです。契約の状況を示す書類をしっかり残し、税務調査のリスクを考えると早めに専門家へ確認しておくのが無難です。

その他の不動産取得税や相続に関するFAQ

ここでは、不動産の相続や税金に関するよくある疑問について、編集部が専門家の視点から分かりやすくお答えします。

Q1:相続した実家をすぐに売却すると税金はどうなりますか?

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税がかかります。ただし、空き家の売却では3,000万円特別控除を受けられたり、相続税を払っていれば取得費加算の特例が使えたりします。売却のタイミングで手取り額が激変するため、事前のシミュレーションが欠かせません。

Q2:相続税を申告しないと税務署にバレますか?

税務署は市区町村から死亡届の通知を受けており、被相続人の生前の収入や不動産の保有状況も独自のシステムで詳細に把握しています。無申告のまま放置していると高確率で発覚し、延滞税や重加算税といった重いペナルティを課されることになります。

Q3:被相続人が亡くなる直前に引き出した現金はどう扱われますか?

葬儀費用などで引き出したとしても、亡くなった時点で手元に残っていた現金は相続財産に含める必要があります。税務署は金融機関の出金履歴を数年分さかのぼって調査できるため、直前の多額の引き出しは必ず見られると考えておくのが無難です。

相続の問題は税理士に相談

不動産の相続では、ご自身の自己判断で手続を進めると、特例の適用漏れや予期せぬペナルティなど、大きな税務リスクを抱えることになりかねません。当事務所では複雑な試算を行う専門家の紹介が可能です。不安な方は一人で悩まずに相談をおすすめします。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)