相続税の非課税財産とはどのようなもので節税に活用できますか?

相続税の基礎
相続 非課税財産とは何か、墓地や生命保険などの具体例を挙げながら、節税にも役立つ仕組みを分かりやすく解説。

墓地や仏壇などの祭祀財産や一定額の生命保険金などが該当し節税に活用できます。

親家族が亡くなり相続の手続を進める中で、税金がどうなるか不安ですよね。実は法律上、相続税の課税対象から除外される非課税財産というものが存在します。これらは相続税の計算には含まれない仕組み。生前にお墓を購入したり生命保険を活用したりすることで、残されたご家族の税負担を減らすことが可能です。大変ですが、一つずつ制度を理解して進めれば大丈夫です。

相続税の非課税財産とはどのような財産か

相続税は、被相続人(亡くなった人)が遺した財産に対して課税されるのが原則です。しかし、国民感情や社会政策的な配慮から、一定の財産については税をかけないことになっています。これが非課税財産。例えば、ご先祖様を供養するための仏壇や、公益事業に使われる財産などが当てはまります。これらを正しく把握することで、無駄な出費を防ぐことができます。

非課税財産の種類と概要

どのようなものが対象になるのでしょうか。該当する財産は法律で細かく決められています。以下の表に主な非課税財産をまとめました。種類が多いように見えますが、一般のご家庭で関係してくるものは限られています。 下表をご覧ください。

非課税財産の種類概要
祭祀財産墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など日常礼拝の対象
みなし相続財産一定額までの生命保険金や死亡退職金
寄付財産国や地方公共団体、認定NPO法人などへ寄付した財産
その他弔慰金、心身障害者共済制度の給付金を受ける権利など

主な非課税財産の内容を詳しく解説

ここからは、よく使われる代表的な非課税財産について詳しく見ていきましょう。特に祭祀財産や生命保険金は、多くの方が該当する可能性が高い項目です。制度を上手く利用すれば、相続の際の金銭的な不安を取り除くことができるでしょう。

お墓や仏壇などの祭祀財産

墓地や墓石、仏壇、仏具、神棚など、日常的にご先祖様を礼拝するための物は祭祀財産と呼ばれます。これらは国民感情に配慮し税の対象外とされています。庭内神し(屋敷内に祀られている社や祠)などもこの祭祀財産に含まれる要素。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的にはどんな仏具でも非課税と思われがちですが、実務の現場では純金製の仏像など骨董的価値があるものが課税対象と判断されるケースが意外と多いです。税務調査のリスクを考えると、常識的な範囲の品に留めておくのが無難と言えます。

生命保険金と死亡退職金の非課税枠

亡くなった方の死亡保険金や死亡退職金にも非課税枠が用意されています。残された家族のその後の生活を保障するための制度です。それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設定されています。別々に計算できるため、大きな節税効果が期待できるポイント。

弔慰金や花輪代などの葬儀関連費用

会社などから遺族に対して支給される弔慰金や花輪代も、世間一般の常識的な金額の範囲内であれば非課税となります。業務上の死亡の場合は普通給与の3年分、それ以外は半年分が非課税の目安とされており、これを超える部分は退職手当金等に含まれる形です。

国や地方公共団体などに寄付した財産

相続した財産を、申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した場合、その財産には相続税がかかりません。社会貢献を考えている方は、選択肢の一つとして検討してみるとよいでしょう。ただし、本物の寄付であることが求められます。

心身障害者共済制度の給付金を受ける権利

地方公共団体の条例に基づく心身障害者扶養共済制度の給付金を受ける権利も対象外です。障害のあるご家族の生活を安定させ、福祉の向上を図る目的の制度であるため、給付金を受け取る権利自体には課税されない仕組みになっています。

非課税財産を活用した節税対策の手順

非課税財産の仕組みを理解すれば、生前に賢く対策をとることができます。具体的な節税の手順について見ていきましょう。財産を現金でそのまま残すよりも、制度を活用したほうが将来の手続も効率化できるはずです。

生前にお墓や仏壇などを購入する

現金で残すと課税されますが、生前にお墓を購入すれば非課税財産に変わります。手順は以下の通り。

  1. 家族でお墓や仏壇の購入について相談する
  2. 生前に本人の現金一括払いで購入し所有する
  3. 相続発生時は非課税財産として税の計算から外す

💡 プロが教える!実務のワンポイント

当事務所の過去の事例では、良かれと思ってお墓をローンで購入されたものの、お亡くなりになった時点で未払金が残っており、その借入金が債務控除できずに税負担が増えてしまったことがよくありました。お墓は必ず現金で完済しておくことが大切です。

生命保険に加入して非課税枠を活用する

預貯金を生命保険に替えることで、大きな非課税枠を活用できます。現金で持っているよりも税金面で非常に有利です。

  1. 法定相続人の数を確認し非課税限度額を計算する
  2. 生前に本人が保険料を負担する形で生命保険に加入する
  3. 受取人を必ず法定相続人に指定する

💡 プロが教える!実務のワンポイント

教科書的な回答はお伝えした通りですが、実務の現場ではお孫さんなど法定相続人以外を受取人にしてしまい、非課税枠が使えない失敗が非常に多いです。受取人の指定には細心の注意を払い、間違いのないように手続を進めてください。

生前に小規模企業共済に加入する

生前に小規模企業共済に加入しておくことも、死亡退職金の非課税枠を活用できるため有効な対策です。経営者の方は検討の余地があります。

  1. 小規模企業共済制度の加入要件を確認する
  2. 生前に無理のない範囲で掛金を積み立てる
  3. 万が一の際は遺族が死亡退職金として受け取る 所得控除の対象にもなります。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

当事務所の過去の事例では、小規模企業共済の掛金を高く設定しすぎて、生前の資金繰りが苦しくなってしまった経営者の方がいらっしゃいました。教科書的な回答は限度額いっぱいまでの加入ですが、手元のキャッシュフローを考えながら慎重に設定しておくのが無難です。

非課税財産に関する5つの注意点

節税効果の高い非課税財産ですが、いくつか気をつけるべき点があります。知識がないまま進めると、後で税務署から指摘を受ける可能性もあるでしょう。ご家族でしっかり確認しておくことをおすすめします。

純金製品など投資目的のものは課税対象

純金製の仏像や骨董品など、日常礼拝用とは考えにくいものは非課税と認められません。投資対象とみなされると、通常の財産と同様に課税されてしまいます。高価な仏具の購入には細心の注意を払ってください。

非課税枠を超える生命保険金は課税される

生命保険金や死亡退職金が非課税になるのは、あくまで「500万円×法定相続人の数」の枠内のみです。この枠を超えた金額については、通常の財産と同様に課税の対象となります。受け取った全額が無条件に非課税になるわけではありません。

法定相続人の数の数え方にはルールがある

生命保険金などの非課税枠の計算で使う「法定相続人の数」には、特別なルールが存在します。例えば、相続放棄をした人がいる場合でも、その人は「法定相続人の数」に含めて計算することが可能。これは計算上有利に働きます。

養子がいる場合の法定相続人の制限

養子縁組で法定相続人を増やせば非課税枠も広がりますが、無制限ではありません。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか、税の計算上の法定相続人には含められません。過度な節税を防ぐためのルールが設けられています。

基礎控除以下の場合はそもそも非課税

遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額以下であれば、そもそも相続税は一切かかりません。この場合は、非課税財産を使った節税対策を慌てて行う必要はないでしょう。まずは財産の総額を把握することが重要です。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的には「基礎控除ギリギリなら大丈夫」と言われますが、ご自身で土地を評価すると高額になり、実は基礎控除を超えていたというケースが意外と多いです。不安な場合は、正確な評価を専門家に任せるのが安心できる選択と言えます。

その他の相続と非課税財産に関するFAQ

非課税財産について、よくある疑問にお答えします。少しでも皆様の不安が解消されれば幸いです。

Q1:借金も非課税財産になりますか?

借金は非課税財産ではなく「債務」として扱われます。プラスの遺産総額からマイナスできるため、結果的に税金を減らす効果があります。ただし、お墓のローンなど一部の未払金は差し引けないため注意が必要です。税理士の実務でも判断が分かれる場面。

Q2:生命保険の受取人が相続放棄をした場合はどうなりますか?

相続放棄をした人でも死亡保険金を受け取ることは可能です。しかし、非課税枠の適用は受けられず、受け取った全額が課税対象となってしまいます。現場の感覚としても、このルールを勘違いして思わぬ課税を受けてしまう方が少なくありません。

Q3:寄付をする場合、どこへ寄付しても非課税になりますか?

いいえ、寄付先は国や地方公共団体、特定の公益法人等に限られます。さらに、相続税の申告期限(亡くなった日の翌日から10ヶ月以内)までに寄付を完了させる必要があるため、時間との戦いになります。専門家の視点では早めの準備が鍵です。

相続の問題は税理士に相談

自己判断で非課税財産の特例を適用しようとすると、要件を満たせず税務調査で指摘されるリスクがあります。正確な計算や財産評価が必要となるため、少しでも不安がある場合は、早めに専門家である税理士へ相談しましょう。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)