相続登記で登録免許税の負担を軽減する免税措置はありますか?

相続税の基礎
相続登記にかかる登録免許税を減らすための軽減措置(免税)について、適用条件や仕組みを解説します。

2027年3月31日まで特定の土地相続で登録免許税が免除される軽減措置があります。

大切な家族を失い、悲しみの中で不動産の名義変更手続を進めるのは大変なことです。手続には費用がかかり、通常は固定資産税評価額に応じた税金が課されます。しかし、特定の条件を満たせば税金が0円になる軽減措置が用意されています。 負担となる手続が続きますが、制度を正しく利用すれば費用を大きく減らせるはずです。

登録免許税の免税措置の主な要件

期間限定で導入されたこの特例は、2027年(西暦)3月31日まで延長されています。 国が進める所有者不明土地問題への対策が背景にあり、長期間放置された土地の整理を促す狙いが込められている制度です。 適用されるケースは大きく分けて以下の2つとなります。

  1. 相続人が登記をせずに死亡した土地(数次相続)
  2. 固定資産税評価額が100万円以下の土地

相続人が登記をせずに死亡した土地

祖父の土地を父が引き継ぎ、名義変更しないまま父が亡くなって子が相続するケースを数次相続と呼びます。 この場合、祖父から父への名義変更にかかる税金が免除されます。 亡くなった方名義への変更であっても、将来の権利を明確にするために非常に重要な手続といえるでしょう。

第三者へ売却していた場合も対象

途中の相続人が生前にその土地を第三者に売却していた場合でも、中継ぎとなる名義変更は免税対象です。 不動産取引の前提として過去の登記を整える際にも、この特例を活用して費用を抑えることができます。 複雑な権利関係を紐解くきっかけにしてください。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的にはわざわざ亡くなった方へ名義を変える意味はないと思われがちです。 しかし、当事務所の実務では、権利関係が複雑になり「会ったこともない親族の同意が必要になった」というご相談が非常に多いという実情があります。 免税措置を活用し、登記簿を正確な状態に保つことが将来のトラブルを防ぐ鍵となります。

固定資産税評価額が100万円以下の土地

土地の固定資産税評価額が100万円以下の小規模な土地も免税対象です。 不動産の価格を抑え、負担なく名義変更を完了させるための措置といえるでしょう。 評価の低い山林や農地だけでなく、一般的な宅地でも評価額の条件を満たせば利用できます。

制度の拡大により全国の土地が対象へ

以前は市街化区域外の土地などに限定されていましたが、現在は全国の土地へと対象が拡大されています。 また、上限額も10万円から100万円へと大きく引き上げられました。 利用できる方が大幅に増えているため、ご自身の土地の評価額を一度確認してみましょう。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

複数の土地を引き継ぐ場合、合計額ではなく1筆の土地ごとに100万円以下かどうかを判断します。 税理士の現場では、共有持分として引き継ぐケースも少なくありません。 その場合は土地全体の評価額に持分割合を掛けた金額が100万円以下であれば免税が適用されるため、見落とさないように注意が必要です。

免税措置を利用する際の注意点

制度を利用するためには、いくつかの厳格な条件をクリアしなければなりません。 自動的に税金が安くなるわけではないため、事前の確認が重要です。 少しのミスで適用外となることもあるため、要件を一つずつ慎重に確認しながら進めていきましょう。

免税対象は原則として「土地」のみ

この軽減措置の恩恵を受けられるのは、原則として土地のみに限定されています。 家屋など建物部分については適用されない点にご注意を。 土地の上に建つ家屋を同時に引き継ぐ場合、建物部分については通常の税率で税金を納める必要があります。

申請書への根拠条文の記載が必須

法務局へ提出する申請書には、適用する法律の条項を正確に記載する義務があります。 数次相続の場合は「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と書きます。 100万円以下の土地の場合は「同法第84条の2の3第2項により非課税」といった記載が求められます。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

ご自身で申請書を作成される際、この文言をうっかり書き忘れる方が非常に多い傾向にあります。 税務調査のリスクや後からの返金が認められないことを考えると、申請前に専門家のチェックを受けておくのが無難です。 当事務所の過去の事例でも、この記載の不備で手続が止まることがよくありました。

通常の相続登記にかかる登録免許税の計算方法

免税措置に該当しない土地や建物を引き継ぐ場合は、通常の税率で計算した税金を納めます。 計算の基準となるのは、市区町村から送られてくる固定資産税課税明細書に記載された最新年度の評価額になります。 金額が大きく不安になるかもしれませんが、順を追って計算すれば大丈夫です。

原則的な税率と端数処理の基本

引き継ぐ人が法定相続人の場合、税率は固定資産税評価額の0.4パーセントとなります。 評価額の1000円未満を切り捨ててから税率を掛け、算出した税額の100円未満を切り捨てるという手順を踏みます。 計算した結果が1000円未満になった場合は、一律で1000円を納めます。

法定相続人以外が譲り受ける場合

遺言によって法定相続人以外の人が不動産を譲り受ける場合があります。 この場合、税率が0.4パーセントから2.0パーセントに大きく跳ね上がるため注意しましょう。 親族間の引き継ぎを保護する税制上の配慮が背景にあり、第三者が取得する場合は負担が重くなります。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

教科書的な回答では上記の通りですが、実務の現場では私道や非課税の土地が含まれるケースが意外と多いのが実情です。 その場合は「近傍宅地」の評価額を参考に計算しなければなりません。 地積の相違などで計算が複雑になるため、迷ったときは迷わず専門家へご相談ください。

複数の不動産を一括で申請する場合

管轄の法務局が同じで、名義変更の理由が同一であれば、複数の不動産を1つの申請書で一括申請できます。 すべての評価額を合算してから端数処理を行うため、個別に計算するよりも税金が安くなることがあります。 以下の表に、具体的な計算例をまとめましたので参考にしてください。

不動産の固定資産税評価額計算式登録免許税額
15,000,000円15,000,000円 × 0.4パーセント60,000円
23,523,200円23,523,000円 × 0.4パーセント94,000円
150,000円150,000円 × 0.4パーセント1,000円

登録免許税の納付と手続の流れ

税金の計算が終わったら、法務局へ申請書と必要書類を提出し、税金を納めます。 申請書の作成から書類収集まで手間がかかりますが、焦らず確実に進めていきましょう。 納付方法や必要な準備について詳しく解説します。

登録免許税の納付方法

算出した税金は、原則として現金で納付するか、収入印紙を購入して申請書に貼り付けます。 収入印紙は郵便局や法務局内の売場で購入し、専用の台紙に貼って提出するのが一般的と言えるでしょう。 オンライン申請を利用した場合は、インターネットバンキングを使った電子納付も可能です。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

収入印紙は絶対に消印や割印をしてはいけません。 当事務所の過去の事例でも、良かれと思って印紙に割印を押してしまい、無効になってしまったケースがありました。 また、申請書に直接貼るのではなく、別の台紙を用意して貼っておくのが実務の鉄則です。

相続登記に必要な書類と費用

手続には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、引き継ぐ人の住民票など多くの書類が必要です。 これらの書類を取得するために、役所へ支払う発行手数料が1万円から2万円程度かかります。 専門家へ依頼する場合は、別途10万円前後の報酬が必要となるのが一般的です。

相続登記の義務化への対応

2024年4月1日より相続登記が義務化されました。 不動産を引き継いだことを知った日から3年以内に手続を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。 過去の未登記物件も対象となるため、早めの対応が肝心です。

登録免許税と相続の軽減に関するFAQ

Q1:免税措置を受け忘れて登記してしまった場合、後から返金されますか?

手続完了後に「実は免税措置の対象だった」と気づいても、納めすぎた税金が返金されることはありません。 そのため、事前の確認と申請書への正確な根拠条文の記載が非常に重要となります。 不安な場合は提出前に専門家に相談しましょう。

Q2:免税措置を利用するのに必要な証明書はありますか?

特例を受けるために、役所で特別な証明書を取得する必要はありません。 申請書の登録免許税の欄に、適用する租税特別措置法の条項を記載するだけで足ります。 ただし、評価額を証明する固定資産評価証明書などの添付は通常通り求められます。

Q3:相続税を支払えば、登録免許税は免除されますか?

相続税と登録免許税は全く別の税金です。 相続税を納めたからといって、名義変更にかかる登録免許税が免除されるわけではありません。 逆に、相続税がかからないケースであっても、登記を行う際には原則として登録免許税が発生します。

Q4:登録免許税の計算にはいつの評価額を使いますか?

登記を申請する日が属する年度(4月1日~翌年3月31日)の最新の評価額を使用します。 3月末から4月上旬にかけて申請する場合は、年度が切り替わるタイミングに重なるため、特に注意が必要です。 古い評価額を使うとやり直しになります。

相続の不安は税理士へ相談を

不動産の名義変更に伴う税金の計算や免税制度の適用には、複雑な要件や期限が絡み合っています。自己判断で手続を進めると、適用できたはずの軽減措置を見落としたり、不要な税金を納めたりする税務リスクが伴います。少しでも不安を感じたら、豊富な知見を持つ専門家である税理士へ相談し、確実なサポートを受けることを強く推奨します。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)