法定相続人の人数で相続税の計算は変わるのでしょうか?

相続税の基礎
法定相続人の人数で相続税の基礎控除が変わる仕組みと、計算方法を解説します。

法定相続人の人数が多いほど相続税の基礎控除額が増えて税負担は軽減されます。

結論として、法定相続人の人数は相続税の計算結果に直結します。遺産にかかる税金を減らせる「基礎控除額」が、人数に応じて増える仕組みだからです。この記事では、誰が法定相続人になるのかという基礎知識から、複雑な相続税の計算方法までを詳しく解説していきましょう。大変な手続も、一つずつ進めれば大丈夫です。

法定相続人とは財産を引き継ぐ権利を持つ人のこと

法定相続人とは、民法で定められた遺産を相続する権利を持つ人のこと。遺言書がない場合、この法定相続人全員での遺産分割協議により分け方を決定します。実際に遺産を受け取る「相続人」とは区別される点に注意が必要です。

法定相続人の範囲と優先順位

誰が法定相続人になるのかには、明確なルールが存在します。被相続人(亡くなった人)との関係性によって、あらかじめ優先順位が法律で定められています。

配偶者は常に法定相続人になる

被相続人の配偶者は、他の親族の状況に関わらず常に法定相続人となります。ただし、戸籍上の配偶者に限定され、事実婚のパートナーなどは含まれません。

第1順位から第3順位までの血族

配偶者以外の親族は、以下の順序で法定相続人となる決まり。上の順位の人が1人でも存在する場合、下の順位の人は相続人になれません。以下の表に法定相続人の順位と対象者をまとめました。

順位対象者備考
第1順位子(直系卑属)子が既に亡くなっている場合は孫が代襲相続
第2順位父母(直系尊属)第1順位がいない場合に該当。父母が亡くなっている場合は祖父母
第3順位兄弟姉妹第1・2順位がいない場合に該当。亡くなっている場合は甥・姪が代襲相続

💡 プロが教える!実務のワンポイント

前妻や前夫との間に生まれた子どもにも相続権はしっかり残るもの。当事務所の過去の事例では、相続発生後に戸籍を調べて初めて前の配偶者との間の子どもの存在が発覚し、協議が難航するケースが意外と多いです。円滑な手続のため、生前に戸籍関係を整理しておくことを強く推奨します。

相続税計算における「人数」の扱い

相続税には、遺産総額から無条件で差し引ける「基礎控除」という非課税枠が用意されています。この計算において法定相続人の数が非常に重要となります。

基礎控除額の計算式

基礎控除額は「3000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」という計算式で算出します。人数が多いほど非課税枠が大きくなるため、結果的に税負担が軽減される仕組みです。

相続放棄をした人がいる場合

相続放棄をした人がいたとしても、基礎控除の計算上は「法定相続人の数」に含めるルール。これは、意図的に放棄をして次順位の人数を増やし、基礎控除額を不当に吊り上げる行為を防止するためです。

養子縁組と人数の制限

養子も実子と同じく法定相続人に含まれる存在。しかし節税目的の無制限な養子縁組を防ぐため、相続税の計算上カウントできる養子の数には制限が設けられています。被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。以下の表に養子縁組の種類と相続権の違いを整理しました。

種類実親との関係相続の権利
普通養子縁組親子関係が継続する養親と実親の両方で法定相続人になる
特別養子縁組親子関係が消滅する養親の相続に対してのみ法定相続人になる

💡 プロが教える!実務のワンポイント

養子縁組をすれば無条件で節税になると誤解される方が少なくありません。教科書的な回答は「養子で基礎控除が増える」ですが、状況によっては相続税の2割加算の対象となり、かえって税負担が跳ね上がるリスクも。税務調査のリスクを考えると専門家のシミュレーションを経て慎重に判断しておくのが無難です。

法定相続人になれない人・注意点

親族や近しい間柄であっても、法律上の法定相続人になれないケースが存在します。どのような人が除外されるのか、事前に把握しておきましょう。

内縁の妻や事実婚のパートナー

長年連れ添った事実婚の配偶者であっても、法律上の婚姻関係がなければ法定相続人にはなれません。どうしても財産を残したい場合は、生前に遺言書の作成が必須となります。

相続欠格と推定相続人の廃除

被相続人を故意に死亡させたり、遺言書を偽造したりした場合は「相続欠格」となり自動的に相続権を失います。また、被相続人を虐待し家庭裁判所に「廃除」を申し立てられた場合も同様に権利を剥奪されます。

行方不明の相続人と胎児の扱い

相続人が行方不明でも無視して手続は進められません。解決策として家庭裁判所で不在者財産管理人を選任する必要があります。また、お腹にいる胎児は、無事に生まれれば相続人として扱われる特例が適用されます。

法定相続分(目安)と遺産分割

法定相続人同士で遺産を分ける際の目安として、民法で「法定相続分」が定められています。遺産分割の基準となるものの、必ずしもこの割合通りに分ける必要はありません。以下の表にケース別の法定相続分を整理しました。

相続人の構成配偶者の割合その他の相続人の割合
配偶者と子1/2子全員で1/2
配偶者と直系尊属2/3直系尊属全員で1/3
配偶者と兄弟姉妹3/4兄弟姉妹全員で1/4

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的には法定相続分で分けるのが公平と言われますが、実務の現場では、事業の後継者に自社株や不動産を集中させるなど、あえて偏りを持たせるケースが意外と多いです。後の親族間トラブルを防ぐため、生前に遺言書を作成して分割方針を明確に定めておくことが最善の対策といえます。

相続税の税率と計算の基本手順

相続税の計算は複雑に見えますが、基本的な仕組みがあります。基礎控除を差し引いた金額(課税遺産総額)をベースに、まずは一連の手順に沿って全体の税額を割り出すのです。

計算の具体的なステップ

初めに、課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定して各人の税額を算出。それらを合算して「相続税の総額」を求めます。最後に、実際の取得割合に応じてそれぞれの相続人に税額を割り振るという流れです。下表は相続税の速算表の一部。

法定相続分の取得金額税率控除額
1000万円以下10%なし
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円

配偶者の税額軽減などの特例

配偶者が相続する場合、1億6000万円または法定相続分までなら相続税がかからないという大きな特例があります。他にも未成年者控除や障害者控除、相次相続控除など、税負担を大きく減らす制度が用意されているので活用を検討しましょう。

被相続人の戸籍謄本で正確な確認を

誰が本当の法定相続人なのかを確定させるため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を必ず集めましょう。これは遺産分割協議や名義変更、そして相続税申告における手続の基本中の基本となります。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

配偶者控除などの特例を使えば税額がゼロになるからと、申告を放置してしまう方がいます。当事務所の事例でも、申告期限を過ぎてからご相談に駆け込まれる事態がよくありました。特例を適用して税額をゼロにするためには、期限内の「申告」が絶対条件ですのでご注意ください。

法定相続人と相続税に関するFAQ

Q1:孫に遺産を相続させたい場合どうすればいいですか?

子が生きている場合、孫は法定相続人になりません。遺産を渡したい場合は、生前贈与を行うか、遺言書で指定する(遺贈)か、養子縁組をする方法があります。ただし、代襲相続ではない孫への相続は、相続税が2割増しになる点に注意が必要。専門家の視点では、二次相続まで見据えたシミュレーションが不可欠と考えます。

Q2:相続人が誰もいない場合は遺産はどうなりますか?

法定相続人が誰もいない場合、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。一定の手続を経て相続人を捜索し、それでも現れず、特別の縁故があった方(介護に尽力した人など)への分与もなければ、最終的に遺産は国庫に帰属する決まりです。

Q3:借金の方が多い場合でも相続しなければいけませんか?

借金などのマイナス財産を引き継ぎたくない場合は「相続放棄」が可能。相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続を行います。同順位の全員が放棄すると次の順位の人へ相続権が移るため、後々のトラブルを防ぐには親族への事前の連絡が鍵となります。

相続の不安は税理士へ相談を

相続税の計算や法定相続人の確定は非常に複雑で、自己判断による計算ミスや特例の適用漏れは、後日の税務調査や多額のペナルティといった深刻な税務リスクを招きかねません。大切な会社や家族を守るためにも、迷わず相続に強い専門家へご相談されることを強くお勧めします。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)