株式を相続したら相続税はいくら発生し評価や売却はどうなりますか?
株式を含む遺産が基礎控除を超えると相続税がかかり、株式の評価方法は上場・非上場で異なります。売却して利益が出た場合は、別途税金がかかります。
株式を含む遺産総額が基礎控除額を超えると、相続税の申告が必要です。2026年時点の税制では、上場株式と非上場株式で評価方法が変わります。相続した株式を売却して利益が出たときは、20.315%の譲渡所得税がかかる仕組みです。特例を活用することで税金を軽減できます。
株式にかかる相続税が発生する基準と基礎控除
株式を相続しても、すべての人が相続税を払うわけではありません。亡くなった人(被相続人)が遺した財産の合計額が、基礎控除額(税金がかからない枠)を超えたときだけ税金が発生します。
基礎控除額の計算方法と具体例
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します(相続税法第15条)法定相続人が妻と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円になります。株式や不動産などの遺産総額が4,800万円以下なら、相続税の申告も納付も必要ありません。
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要件の境界線として、法定相続人の数に含められる養子の数には制限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなります(相続税法第15条第2項)。養子を増やしても無制限に基礎控除額を増やせるわけではありません。この境界線を誤ると、基礎控除額の計算を間違えて追徴課税のリスクが生じます。
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上場株式の相続税評価額を計算する方法
上場株式(証券取引所で売買される株式)を相続した場合、相続税を計算するための評価額(相続税評価額)を算出します。上場株式の価格は日々変動するため、一定のルールにもとづいて有利な株価を選べる仕組みになっています。
評価に用いる4つの株価と選択ルール
上場株式の評価では、4つの株価のうち最も低い金額を採用できます(財産評価基本通達169、国税庁タックスアンサーNo.4632)。株価が下がった時期の金額を選ぶことで、相続税の負担を低く抑えられます。
| 株価の種類 | 評価の基準 |
|---|---|
| 亡くなった日の終値 | 課税時期(亡くなった日)の最終価格 |
| 亡くなった月の終値平均 | 亡くなった月の毎日の終値の月平均額 |
| 前月の終値平均 | 亡くなった日の前月の毎日の終値の月平均額 |
| 前々月の終値平均 | 亡くなった日の前々月の毎日の終値の月平均額 |
それぞれの株式ごとに最も低い価格を選んで評価額を決定します。証券会社が発行する残高証明書などで金額を確認できます。
休日や権利落ち日が重なる場合の注意点
亡くなった日が土日祝日で市場が休みの場合、最も近い日の終値を採用します(前後の日が同じ近さなら両日の平均額)。また、配当や株式の割当てなどの権利落ち日から権利確定日までの間に亡くなったときは、権利落ち前の終値を使うなど特別な調整が必要です(財産評価基本通達170・171)。
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誤解が生じやすい論点として、配当金の権利確定日後に亡くなった場合の扱いに注意が必要です。配当金を受領していなくても、配当期待権(配当を受け取る権利)や未収配当金として相続財産に加算することがあります(財産評価基本通達193など)。株式本体の評価額だけに目を奪われ、配当の権利を申告漏れにしない配慮が求められます。
非上場株式の相続税評価額を計算する方法
非上場株式(証券取引所に上場されていない株式)は、市場価格が存在しません。そのため、会社の規模や資産状況、株主の立場に応じて複雑な計算を行って評価額を求めます。
原則的評価方式(類似業種比準方式と純資産価額方式)
相続した人が会社を支配する立場にある場合などは、原則的評価方式で計算するルールです(財産評価基本通達178)。類似業種の上場会社の株価と比較する「類似業種比準方式」と、会社の純資産額をもとに計算する「純資産価額方式」が設けられています。会社の規模(大会社・中会社・小会社)に応じて、これらを組み合わせて評価します。
特例的評価方式(配当還元方式)
会社の経営に関与しない少数株主が株式を相続した場合、配当還元方式という特例的な評価を行います(親族を含めた持株割合などによっては適用されません。財産評価基本通達188・188-2)。配当還元方式は、過去の配当金をもとに株価を計算するため、一般に原則的評価方式よりも評価額が低くなります。
| 評価方式 | 適用されるケース | 評価の特徴 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 同族株主(経営者側)で大会社・中会社 | 類似する上場企業の株価や業績と比較して算出 |
| 純資産価額方式 | 同族株主(経営者側)で小会社や資産保有会社 | 会社の資産から負債を引いた純資産額をもとに算出 |
| 配当還元方式 | 少数株主(経営に関与しない立場) | 1株あたりの年配当金額を10%で還元して算出 |
株主の立場や会社の規模によって評価方式が分かれる仕組みです。適用する方式を間違えると、税額が大きく変わるため注意してください。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
立証に必要な資料として、非上場株式の評価には直前3期分の決算書や勘定科目内訳明細書、株主名簿が不可欠です。税務署に提出する評価明細書を作成する際、これらの資料がそろっていないと正確な評価額を計算できません。過去の土地評価額や含み益の確認も必要になるため、相続開始後すぐに資料を収集する必要があります。
相続した株式を売却するときにかかる税金
相続した株式を売却して現金化する場合、相続税とは別に譲渡所得税(所得税と住民税)がかかります。売却益が出たときのみ課税される仕組みです。
譲渡所得の計算と取得費の引き継ぎ
売却益は「売却金額−(取得費+売却手数料)」で計算します(所得税法第38条)。取得費は、亡くなった人がその株式を購入したときの価格を引き継ぐルールです(所得税法第60条)。購入価格が不明なときは、売却額の5%を取得費とみなせます。税率は一律20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)となります。
取得費加算の特例による節税
相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(通常は相続開始から3年10ヶ月以内)に相続した株式を売却すると、支払った相続税の一部を取得費に加算できます(租税特別措置法第39条)。取得費が増えることで売却益が減り、譲渡所得税を大幅に安く抑えられます。
非上場株式を発行会社に売却する特例(金庫株)
非上場株式を発行会社(自社)に売却すると、通常は売却代金の一部にみなし配当課税が適用されることがあります。しかし、相続税を納付する人が、相続税の課税対象となった非上場株式を通常は相続開始から3年10ヶ月以内に売却するなど、一定の要件を満たせば、一律20.315%の譲渡所得課税となる特例が使えます(租税特別措置法第9条の7)。この特例を使うには、売却日までに発行会社へ届出書を提出する必要があります。納税資金を確保する際に非常に有効な手法となります。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
手続の順序と期限として、相続した株式を売却するには、まず証券口座などの名義変更を完了させる必要があります。名義変更前に売却注文を出すことはできません。また、取得費加算の特例を受けるには「相続開始から通常3年10ヶ月以内」に売却し、その売却について確定申告で特例を適用する必要があります。手続が遅れると特例が使えなくなるため、早めの着手が不可欠です。
株式の相続手続を進める基本手順
株式の相続は、調査から名義変更、税務申告まで順番に進めます。手続きの流れを正しく把握しておくことで、期限遅れを防ぐことができます。
遺言書の有無と遺産分割協議
最初に遺言書があるか確認します。遺言書がない場合は、相続人全員で誰が株式を引き継ぐか協議(遺産分割協議)を行います。全員の合意を得て、遺産分割協議書を作成する手順となります。
証券会社や発行会社での名義変更手続
上場株式の場合は、証券会社に連絡して相続人名義の口座へ名義変更(移管)を行います。非上場株式の場合は、発行会社に連絡して株主名簿の書換を請求する流れです。名義変更が終わると、売却や配当金の受取が可能になります。相続税が発生する場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納付を行う必要があります。
株式の相続税に関するFAQ
遺産総額(株式や預貯金、不動産の合計)が基礎控除額以下であれば、相続税の申告も納付も不要です。ただし、小規模宅地等の特例を適用して基礎控除以下にする場合や、配偶者の税額軽減によって税額がゼロになる場合は、申告が必要となります。特例を使わずに基礎控除以下であれば手続きの必要はありません。
NISA口座の非課税効果は、保有者が亡くなった時点で終了します。相続人のNISA口座に株式を直接移すことはできず、相続人の課税口座へ移管されます。原則として亡くなった日の終値が相続人の取得価額となり、その後の値上がり分には通常の譲渡所得税(20.315%)がかかります。相続税の計算では、通常の上場株式と同じく、亡くなった日の終値と、亡くなった月・前月・前々月の月平均額などを比較して評価します(国税庁タックスアンサーNo.1464・No.4632)。
購入時の契約書や口座開設時の記録が残っておらず取得費が不明な場合、売却代金の5%を取得費として計算できます(国税庁タックスアンサーNo.1464)。例えば1,000万円で売却した場合、50万円が取得費となり、残り950万円に20.315%の譲渡所得税がかかります。証券会社で顧客勘定元帳を開示請求すれば購入価格が分かる場合もあります。
非上場株式の評価は極めて複雑であり、自分で計算して申告することは大きなリスクを伴います。会社の決算書をもとに資産や利益を正確に修正し、規模区分を判定する必要があるためです。誤った計算で申告すると、過大申告で損をしたり、過少申告により税務調査でペナルティを科されたりするおそれがあります。
相続の不安は税理士へ相談を
株式の評価や相続税の計算を自己判断で行うと、申告漏れや特例の適用忘れにより予期せぬ税務リスクを負うおそれがあります。複雑な評価や節税の手続きは、相続税に精通した税理士へ早めに相談することをおすすめします。
