親の預金を相続したら相続税はいくらからかかりますか?
預金を含む遺産総額が基礎控除額を超える場合に相続税がかかります。
預金の相続税は単体で計算しません。不動産や株式なども含めた全ての遺産総額から、非課税枠である基礎控除額を差し引いて課税対象を算出します。2026年時点の税制において、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で定まります。遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税は発生せず、税務署への申告も不要です。
預金にかかる相続税の仕組みと基礎控除額
預金に相続税がかかるかどうかは、基礎控除額と遺産総額の比較で決まります。基礎控除額の仕組みと計算方法を確認しましょう。
基礎控除額の計算式と法定相続人の数
相続税の基礎控除額は、3,000万円に600万円×法定相続人の数を加えて計算します。法定相続人の数が増えるほど控除額は大きくなります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
法定相続人の数には、相続放棄をした人も含まれます。一方、養子を法定相続人に含める場合は、実子がいるときは1人、いないときは2人までに制限されます(相続税法第15条第2項)。
特例の適用と相続税申告の必要性
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うと、税額が0円になる場合があります。しかし、特例の適用で納付額がゼロになる場合でも、相続開始の翌日から10か月以内に申告手続を済ませる必要があります。
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申告期限までに遺産分割が終わっていない場合、分割されていない財産にはこれらの特例を適用できません。ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、原則として申告期限から3年以内に遺産分割を終えれば、後から特例を適用できます(国税庁タックスアンサーNo.4208)
▷関連:株式を相続すると相続税や口座名義変更の手続はありますか?
預金の種類別における相続税評価額の計算方法
預貯金の相続税評価額は、原則として死亡日における残高をもとに評価します(財産評価基本通達203)。預金の種類ごとに評価方法が異なるため整理が必要です。
普通預金と当座預金の評価方法
普通預金や当座預金は、相続開始日における預金残高がそのまま評価額になります。解約時に支払われる利息が少額である場合は、利息を評価額に加算しなくても差し支えありません(財産評価基本通達203)。
定期預金の評価と既経過利息の計算
定期預金や定期積金は、相続開始日の預入残高に「既経過利息」を加えて評価します。既経過利息とは、死亡日に解約した場合に受け取れる税引後の利息のことです。 計算時は、利息の額から20.315%の税金(所得税・復興特別所得税・住民税)を差し引いた金額を元本に加算します(財産評価基本通達203)。
外貨預金の評価方法と為替レート
外貨預金は、相続開始日の外貨建て残高と既経過利息の合計を日本円に換算して評価します。為替レートは、被相続人が取引していた金融機関が公表する相続開始日の「対顧客直物電信買相場(TTB)」を使用します(相続開始日に相場がない場合は、直前の最も近い日の相場を使用します。財産評価基本通達4-3)。
| 預金の種類 | 相続税評価額の計算方法 | 評価の基準となる数値 |
|---|---|---|
| 普通預金・当座預金 | 相続開始日の預入残高 | 死亡日時点の残高 |
| 定期預金・定期積金 | 預入残高 + 税引後既経過利息 | 預入残高と死亡日解約時の利息 |
| 外貨預金 | 外貨建て残高 + 既経過利息 × TTB | 死亡日のTTBレートで円換算 |
評価額を正確に算出するため、金融機関の残高証明書などで残高と既経過利息を確認しましょう。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
定期預金の既経過利息を評価する際、満期前であっても死亡日時点で解約した場合の利息計算が必要です。金融機関から発行される残高証明書だけでは利息額が分からない場合は、「経過利息計算書」などで確認しましょう(財産評価基本通達203)。
預金の相続税申告で注意すべき重要ポイント
預金の申告では、税務調査で指摘されやすい論点が存在します。名義預金や直前の引き出し、口座凍結後の手続など、トラブルを防ぐための留意点を把握しましょう。
名義預金と判定されるリスクと回避策
子供や孫の名義口座であっても、資金の出所が被相続人であり、被相続人が通帳や印鑑を管理していた場合は「名義預金」と判断されることがあります。実質的に被相続人の財産であれば、相続税の課税対象に含める必要があります。名義預金と判定されないためには、贈与する側と受ける側で贈与の合意をし(民法第549条)、預金の管理状況などから贈与の事実を確認できるようにしておくことが重要です。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
名義預金の判定では、口座の名義ではなく「誰が資金を拠出したか」「通帳や実印を誰が管理していたか」が判断の分かれ目となります。生前贈与を主張する場合でも、贈与契約書の存在や受贈者の管理実態を示す証拠資料が残っていないと、税務調査で被相続人の財産と認定されるおそれがあります。
亡くなる直前の引き出しやタンス預金の取扱い
死亡直前に病院代や葬儀費用のために口座から引き出した現金は、死亡日時点で残っていた金額を「現金」として相続財産に計上します。自宅で保管しているタンス預金も同様です。税務署は必要に応じて金融機関への照会などにより、過去の口座取引を調査することがあります(国税通則法第74条の2)。申告漏れが判明した場合は、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが科されます(国税通則法第60条、第65条)。
口座凍結と遺産分割前の仮払い制度
金融機関が死亡の事実を把握すると口座は凍結され、原則として遺産分割が終わるまで引き出しができません。ただし、遺産分割前の相続預金の払戻し制度(民法第909条の2)を利用すると、各金融機関ごとに「相続開始時の預金額×3分の1×法定相続分」(上限150万円)まで、単独で仮払いを受けられます。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
相続放棄を検討している相続人が仮払い制度や預金の引き出しを行い、そのお金を自分のために消費すると「単純承認」とみなされます(民法第921条第1号)。一度単純承認にあたると、後から家庭裁判所に相続放棄の申立てを行っても認められなくなるため、慎重な判断が必要です。
預金の相続税に関するFAQ
死亡直前に引き出したお金のうち、死亡日時点で残っている金額は「現金」として相続財産に含める必要があります。亡くなる前に医療費などとして実際に支払った分は現金に含めませんが、手元に残った現金は申告が必要です。亡くなった後に支払った葬儀費用は、一定の範囲で相続財産から差し引けます。申告を怠ると税務調査で申告漏れを指摘され、加算税の対象となります(国税通則法第65条)。
口座の名義が子供であっても、資金を出したのが親で通帳や印鑑を親が管理していた場合は「名義預金」とみなされることがあります。名義預金は親の相続財産として相続税の課税対象になります。贈与を成立させるには、親子双方の合意が必要です(民法第549条)。
満期前の定期預金は、相続開始日時点の預入残高に、死亡日解約時の税引後既経過利息を加算して評価します。利息にかかる20.315%の税金を差し引いた後の利息を元本に足します(財産評価基本通達203)。金融機関の残高証明書などで残高と既経過利息を確認して計算します。
遺産分割前の相続預金の仮払い制度を利用することで、遺産分割前でも一定額を引き出せます(民法第909条の2)。上限は1つの金融機関につき「死亡時の預金額×3分の1×法定相続分」または150万円のいずれか低い額です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や申請者の印鑑証明書などを金融機関に提出して手続きを行います。
相続の不安は税理士へ相談を
預金の相続税評価や名義預金の判定を自己判断で行うと、申告漏れとなりペナルティが生じるリスクがあります。申告期限である10か月以内に適切な手続を行うため、複雑な計算や税金面の不安がある場合は、相続に詳しい税理士への相談をおすすめします。
