平成27年以降の相続税シミュレーションで納税額はわかりますか?

相続税の基礎
平成27年以降の相続税シミュレーションを活用し、法改正後の納税額の大枠を正しく把握する方法を解説するイラスト。

シミュレーションを活用すれば大枠の納税額を事前に把握できます。

ツール等で計算手順を踏めば、おおよその納税額を知ることは可能。 しかし、平成27年1月1日以後の相続税法改正により、課税対象者が大幅に増加しました。 正確な財産評価や特例の適用判断が欠かせない現実があります。

平成27年の相続税改正による増税の背景

平成27年に施行された改正は、相続税の課税強化という大きな影響をもたらしました。 特に基礎控除額の大幅な引き下げにより、都市部に土地付きの一戸建てを持つだけでも申告対象となるケースが急増。 課税割合は従来の4%台から8%台へと倍増する結果となっています。

基礎控除額の算出方法

基礎控除とは、遺産から差し引くことができる非課税枠のこと。 改正により、この控除額は従来の6割程度に縮小されました。 以下の表は、改正前後の基礎控除額の比較です。

改正前改正後(平成27年以降)
5,000万円 + (1,000万円 × 法定相続人の数)3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

法定相続人のカウント方法

法定相続人の数によって控除額は大きく変動。 仮に相続放棄をした人がいても、法定相続人の数には含めて計算を行います。 養子を法定相続人に含める場合、被相続人に実子がいれば1人まで、実子がいない場合でも2人までという上限が設定されています。

税率の引き上げとその他の改正点

各相続人の取得金額が2億円を超える場合、最高税率の引き上げが行われました。 以下の表は、取得金額が2億円を超える部分の税率と控除額の比較です。

法定相続分に応ずる取得金額改正前税率改正前控除額(万円)改正後税率改正後控除額(万円)
2億円超 3億円以下40%1,70045%2,700
3億円超 6億円以下50%4,70050%4,200
6億円超50%4,70055%7,200

💡 プロが教える!実務のワンポイント

教科書的な回答では「基礎控除を超えなければ無税」となりますが、税理士の実務では思わぬ財産の発見で課税対象となるケースが意外と多いです。 名義預金やタンス預金、過去の贈与などが後から判明し、慌てて対応する事例が後を絶ちません。 生前から全財産を正確に洗い出しておくこと。これが税務調査のリスクを下げる有効な手段と言えるでしょう。

相続人に有利なその他の改正点

平成27年の改正は増税だけではありません。 特定の条件を満たすことで、相続人の負担を軽減できる制度も同時に拡充されました。 正確に制度を理解し、活用できるかどうかが鍵。

小規模宅地等の特例の拡大

居住用や事業用の宅地の評価額を最大80%減額できる特例について、適用範囲が広がりました。 特定居住用宅地等の限度面積が240㎡から330㎡に拡大。 要件を満たせば、土地の評価額を大きく下げることが可能です。

未成年者控除と障害者控除の拡充

未成年者や障害者が相続人となる場合、税額から直接差し引ける控除額が引き上げられました。 未成年者控除は1年あたり6万円から10万円に増加。 障害者控除も一般障害者で10万円、特別障害者で20万円へと手厚くなっています。

相続税を計算する具体的な4つの手順

相続税の計算は、決められた順序に従って進める必要があります。 複雑な計算式も、ステップを分ければ理解しやすいはず。 全体像を把握し、シミュレーションに役立ててください。 以下の手順で計算を進めます。

  1. 課税価格の合計額を算出する
  2. 課税遺産総額を計算する
  3. 相続税の総額を算出する
  4. 各相続人の納付額を決定する

課税価格の合計額を算出する

まずは、すべての相続財産をリストアップして評価額を計算します。 現金や預貯金だけでなく、不動産や有価証券、みなし相続財産である死亡保険金などもすべて含めることが必須。 そこから借入金や葬式費用といったマイナスの財産を差し引きます。

課税遺産総額を計算する

次に、算出した課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。 この段階で金額がゼロやマイナスになれば、原則として相続税の申告や納税は不要。 ただし特例を適用した結果として基礎控除内におさまった場合は申告が必須となります。

相続税の総額を算出する

課税遺産総額を、法定相続分通りに分割したと仮定して各人の取得額を算出します。 その金額に相続税の速算表に定められた税率を掛け、控除額を引いて各人の仮の税額を計算。 これを全員分合計したものが、相続税の総額です。

各相続人の納付額を決定する

計算された相続税の総額を、実際の遺産分割の割合に応じて各相続人に割り振ります。 最後に、各相続人の個別事情に応じた税額控除(配偶者の税額軽減や未成年者控除など)を差し引き、最終的な納付額が決定するという流れ。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

一般的には配偶者の税額軽減を使えば無税になると言われますが、実務の現場では二次相続を見据えずにトータルで損をするケースが目立ちます。 当事務所の過去の事例でも、一次相続で配偶者に財産を集中させ、次の相続で子どもたちが多額の税負担に苦しむことがよくありました。 目先の節税だけでなく、将来の税負担まで見極めた遺産分割を検討すべきでしょう。

平成27年以降の相続税シミュレーション事例

実際にシミュレーションを行うことで、納税額のイメージが具体化します。 ここでは、一般的な家族構成を例に計算の手順を確認してみましょう。 遺産総額と家族構成がわかれば、ある程度の目安をつけることが可能です。

配偶者と子ども2人で財産8,000万円の場合

法定相続人が配偶者と子ども2人(計3人)の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。 遺産総額8,000万円から4,800万円を引いた「3,200万円」が課税遺産総額。 これを法定相続分(配偶者1/2、子それぞれ1/4)で分けます。

各人の税額計算と総額の算出

配偶者は1,600万円、子はそれぞれ800万円を取得したと仮定します。 税率を当てはめると、配偶者は「1,600万円×15%−50万円=190万円」。 子は「800万円×10%=80万円」が2人分で160万円。 これらを合計した「350万円」が相続税の総額です。

実際の納付額はどうなるか

遺産を法定相続分通りに分けた場合、配偶者は配偶者の税額軽減が適用され、納付額は0円になります。 子どもたちはそれぞれ相続税の総額の1/4を負担するため、各87.5万円を納付することに。 特例の適用状況や分割割合によって、この金額は変動します。

各機関のシミュレーションツールの活用方法

自力で複雑な計算をするのが難しい場合、便利なシミュレーションツールが役立ちます。 項目を入力するだけで、瞬時に目安額が判明。 各種ツールを活用して、早めに現状を把握しておきましょう。

SBI新生銀行のシミュレーションツール

SBI新生銀行のツールは、家族構成と財産額を入力するだけで大まかな税額が確認できます。 ただし、法定相続人が5人までといった制限や、養子の考慮が含まれないなどの前提条件があることに注意。 小規模宅地等の特例なども自動計算されないため、ご自身で控除後の金額を入力する必要があります。

ちよだ税理士法人のシミュレーションツール

ちよだ税理士法人のツールも、現預金や不動産、生命保険などの財産と債務を入力して概算を算出する仕組み。 配偶者の有無や子どもの人数を選択するだけで、差引正味遺産額や各人の税額が一覧で表示されます。 あくまで目安であるため、精緻な計算は専門家への依頼が不可欠。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

インターネット上のシミュレーションは便利ですが、不動産の評価額をどう入力するかで結果が全く変わってしまいます。 専門家の視点では、実勢価格と相続税評価額の乖離、再建築不可などの個別事情を見落とすと、シミュレーションが意味をなさないと考えます。 ツールはあくまで最初のステップと割り切り、早めに税理士の簡易査定を受けておくのが無難です。

平成27年以降の相続税シミュレーションに関するFAQ

Q1:シミュレーション結果で無税なら申告は不要ですか?

基礎控除の範囲内に収まっていれば、原則として申告は不要です。 しかし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用して無税となった場合は、申告書の提出が義務付けられています。 期限内に申告しないと特例が認められず、多額の税金が発生する恐れがあるため注意が必要です。

Q2:不動産の評価額はどのように調べればいいですか?

土地は国税庁が公表する路線価方式、または倍率方式で、 建物は固定資産税評価額で評価します。 実際の売却価格とは異なるため、納税通知書や路線価図を確認して正しい数値をシミュレーションに入力しましょう。

Q3:生命保険金は全額が課税対象になりますか?

生命保険金には非課税枠が設けられています。 「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかかりません。 この非課税枠を超えた部分のみがみなし相続財産として課税価格に加算されるため、シミュレーション時にもこの控除を忘れずに反映させてください。

相続の不安は税理士へ相談を

相続の不安は税理士へ相談を 自己判断でシミュレーションを終えてしまうと、財産の評価ミスや特例の適用誤りにより、後から税務調査でペナルティを受けるリスクがあります。最適な遺産分割や二次相続の対策を含め、複雑な相続手続は信頼できる税理士へご相談ください。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)