夫婦間の不動産贈与で相続税対策|贈与税の配偶者控除のメリットと落とし穴
相続税対策として財産の生前贈与をする場合、贈与税が課税されることもあります。 しかし、特例を用いて贈与税額を抑えることができます。今回、ご説明をする贈与税の配偶者控除もその一つになります。ただ、条件などもあるので注意が必要です。
対象となる条件
・結婚して20年以上経過している夫婦
・居住用の不動産または居住用の不動産を購入するための資金の贈与
これらの条件を満たしている場合に贈与税の配偶者控除が受けられます。
控除について
この特例で控除できる金額は最高で2,000万円までとなります。相続開始前3年(令和6年1月1日以降の贈与については7年)以内に贈与した財産物に関しては相続税の課税財産になりますが、配偶者控除の場合は3(7)年以内のものでも課税財産の対象になりません 。基礎控除の110万円も併用ができるため、最高で2,110万円まで控除できます。 しかし、この配偶者控除は同じ夫婦では1回までしか受けられないできませんので注意が必要です。
控除額を超える場合
配偶者に贈与する対象を家の建物部分にした場合は2,000万円を下回る可能性が高いといわれていますが、敷地の場合は不動産評価額が2,000万円を超える可能性があります。敷地の一部の贈与も配偶者控除の適用が可能です。 その際は夫婦での共有名義となります。なお、登記にも一定の費用がかかるので注意が必要です。
どのくらい評価が下がるのか
土地を贈与して配偶者控除を受けた場合に、どのくらい評価が下がるのかを実例を入れて説明します。
田中さん夫婦は結婚して25年が経過し、一軒家も所有しており土地の評価は9,000万円でした。このまま相続になると、「小規模宅地等の特例」を適用できるため、土地の評価は1,800万円となります 。
しかし、生前に贈与税の配偶者控除の特例を受けた場合は、贈与税の基礎控除も合わせて2,110万円が控除できるため、土地の2,110万円分を妻に贈与することになりました。
夫の所有は6,890万円分となり、相続した場合のこの土地の評価は小規模宅地等の特例の適用後1,378万円 となりました。
もちろん、土地の評価が下がれば相続税も低くなるので、配偶者控除で相続税の節税にも繋がりました。
上手くできなかったケースも…
それは妻が先に亡くなってしまった場合です。夫婦の間に子供がいるなら夫と子供が相続人になりますが、子供がいない場合、妻の財産の相続人は夫と妻の直系尊属又は妻の兄弟姉妹になるため、何を相続するか揉める可能性が高くなります。
もちろん、妻が贈与された土地も一部とはいえ相続財産の対象となり、妻の直系尊属又は兄弟姉妹に渡ってしまう可能性があります。人の死はどちらが先になるか読めないため、このようなケースが発生することがあります。
最後に
条件があるとはいえ、配偶者控除を利用して居住用の資金や土地を贈与することは、控除額も大きいことがあって贈与税や相続税の節税に繋がります。
しかし、他の特例を活用した方が条件などのメリットが多くなる可能性もあるので注意が必要です。もし何か生前に対策したいというのならば、一度専門家に相談するといいでしょう。