生前贈与で家族に財産を譲ると税金はどれくらい安くなりますか?
年間110万円以下の贈与なら贈与税はかからず将来の相続税も減らせます。
生前贈与は自分が生きているうちに財産を無償で渡す契約です。暦年課税の基礎控除額110万円を活用すれば、贈与税をかけずに相続財産を減らせます。2026年中の相続では、原則として死亡前3年以内の贈与が相続税の計算に加算されます。加算期間は段階的に延び、2031年以降は7年以内となるため、早い時期からの計画が大切です。
生前贈与の基本ルールと仕組み
生前贈与はあげる人と受ける人の双方の合意で成り立つ契約です。贈与税の課税方法には暦年課税と相続時精算課税の2つの選択肢があります。
暦年課税と110万円の基礎控除
暦年課税は1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計で計算します。もらう人1人あたり年110万円の基礎控除(租税特別措置法第70条の2の4)があり、年間110万円以下なら贈与税の申告は不要です。贈与税は、あげる人ごとではなく、もらう人ごとに計算します。
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父親と母親の2人からそれぞれ110万円ずつ、合計220万円を受け取った場合、基礎控除110万円を差し引いた残りの110万円に贈与税がかかります。計算単位は受贈者(もらう側)基準です。もらう人を増やせば人数分の基礎控除を活用できるため、子供や孫など複数の相手へ分散して贈与すると節税効果が高まります。
贈与税の税率と計算方法
年間110万円を超えた分には贈与税がかかります。税率は一般税率と特例税率の2種類(国税庁タックスアンサーNo.4408)に区分されます。
一般税率と特例税率の違い
贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子や孫が直系尊属(父母や祖父母)から受ける贈与には特例税率が適用されます。夫婦間や兄弟間などに適用される一般税率よりも低い税率が設定されています。
| 基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 特例税率 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 10% |
| 300万円以下 | 15% | 15% |
| 400万円以下 | 20% | 15% |
| 600万円以下 | 30% | 20% |
| 1,000万円以下 | 40% | 30% |
特例税率を使うと、まとまった金額を贈与した際の税負担を軽減できます。実際の税額は、基礎控除後の金額に税率をかけ、速算表で定められた控除額を差し引いて計算します。
2024年以降の生前贈与加算(7年ルール)
2024年1月1日以降の暦年贈与から、相続財産へ加算される期間が3年から7年へ段階的に延長(相続税法基本通達19-1)されています。延長された4年間(3年超7年以内)の贈与については、合計100万円まで控除できる緩和措置があります。
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生前贈与加算(持ち戻し)の対象者は、相続や遺贈、相続時精算課税で亡くなった人から財産を取得した人に限られます(相続税法第19条)。遺言で財産を渡さない孫や子の配偶者など、相続人以外の第三者への贈与は原則として7年加算の対象外です。誰に贈与するかによって加算リスクが変わることが実務上の判断の分かれ目となります。
▷関連:贈与税は年間いくらからかかりますか?申告漏れはバレますか?
相続時精算課税制度と特例制度の活用
110万円の暦年課税以外にも、目的や時期に合わせてまとまった資産を非課税で動かせる制度が用意されています。
相続時精算課税制度の仕組み
60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与で選択できます(年齢は贈与を受けた年の1月1日時点で判定)。累計2,500万円までは、贈与税の申告により贈与税がかかりませんが、相続時には相続税の計算に加算されます(相続税法第21条の12)。2024年以降は年110万円の基礎控除も併用でき、この110万円部分は相続時に加算されません。
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相続時精算課税制度を一度選択すると、選択した贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません(相続税法第21条の9)。また、本制度で土地などの不動産を贈与すると、将来の相続時に小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)が適用できなくなる点に注意が必要です。
住宅・教育・結婚等の非課税特例
目的をしぼった一括贈与には非課税特例が設けられています。制度を使うには、税務署への申告や金融機関での手続きが必要です。
| 特例の名称 | 非課税限度額 | 主な適用要件 |
|---|---|---|
| 住宅取得等資金の贈与 | 最大1,000万円 | 父母や祖父母から住宅取得資金を取得(2026年12月31日まで) |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 最大1,000万円 | 18歳以上50歳未満の子や孫へ結婚・子育て資金を一括贈与 |
特例を活用することで、一度に大きな金額を非課税で引き継ぐことができます。
生前贈与を進める手順と注意点
税務調査で生前贈与を否認されないためには、正しい手順で客観的な証拠を残すことが不可欠です。
贈与契約書の作成と銀行振込
口頭の約束でも契約は成立しますが、証拠を残すために毎回贈与契約書を作成します。現金の受け渡しは通帳に記録が残る銀行振込で行います。
名義預金と判定されないためのポイント
親が子や孫の名義で口座を作り、本人が知らずに管理している口座は名義預金とみなされ、相続税の対象となります。
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名義預金と判定されるのを防ぐには、受贈者本人が口座の通帳、キャッシュカード、届出印を保管し、自由に使える状態にしておくことが大切です(幼い子どもの場合は親権者が代わりに管理できます)。親が自分の財産として印鑑や通帳を管理していると、実質的な所有者は親と判断されることがあります。贈与の合意や、受贈者の財産として管理されている事実を示す資料が重要です。
遺留分や老後資金への配慮
特定の相続人に偏った贈与をすると、遺留分侵害額請求(民法第1046条)のトラブルになる恐れがあります。また、贈与しすぎて自身の老後資金や介護費用が不足しないよう計画を立てます。
生前贈与に関するFAQ
暦年課税で年間110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告は不要です(相続税法第21条の5)。ただし、住宅取得等資金の特例を利用する場合は、110万円以下でも申告が必要です。相続時精算課税制度では、年間110万円以下なら贈与税の申告は不要ですが、初めて利用するときは届出書の提出が必要です。
可能です。負担のない贈与なら、未成年者でも親権者の同意なしに受け取れます。ただし、赤ちゃんなど本人が契約を理解できない場合は、親権者が法定代理人として手続きします。
過去にさかのぼって契約書を作成することはできません。ただし、当時すでに贈与が成立していた場合は、その事実を確認する書面を現在の日付で作成できます。過去の振込履歴や事実関係を整理しておき、今後の贈与については毎回契約書を作成するようにしてください。
あらかじめ総額を決めて分割で渡す定期贈与(相続税法基本通達24-1)と判定されないよう、毎年その都度贈与額を決めて合意し、契約書や振込記録を残しましょう。
相続の不安は税理士へ相談を
生前贈与は節税に有効ですが、名義預金の判定や生前贈与加算の計算、各種特例の適用要件など、複雑な税務リスクが伴います。自己判断で進めると、後から追徴課税を受ける恐れがあります。確実な相続対策を行いたい方は、相続税に強い税理士へご相談ください。
