親から土地を相続したら相続税はいくらからかかりますか?

土地を相続した際に気になる相続税はいくらからかかるのかを、基礎控除の仕組みとあわせてわかりやすく解説します。

土地を含む正味の遺産額が基礎控除額を超えたときにかかります。

土地の相続税は、土地を含む正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときにかかります(相続税法 | e-Gov 法令検索)。2026年現在の税制では、正味の遺産額が基礎控除額以下であれば税金はかかりません。その場合は税務署への申告も不要です。

土地にかかる相続税の仕組みと課税の判断基準

相続税は、亡くなった人(被相続人(ひそうぞくにん))から受け継いだ財産全体に対して課される税金です。土地単体の価値だけでなく、現金や預貯金などを合わせた遺産総額から課税の有無を判断します。

相続税が課税される条件と基礎控除の考え方

相続税は、遺産総額と相続時精算課税適用財産の合計額から非課税財産、債務、葬式費用を差し引き、一定の生前贈与を加算した「正味の遺産額」が基礎控除額を超えた場合に課税されます(相続税法第11条の2、第15条)。正味の遺産額が基礎控除額以下であれば、税金は発生しません(国税庁タックスアンサーNo.4102)。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

被相続人の債務や葬式費用を正しく控除することが判断の分かれ目となります。借入金や未払税金などの債務のほか、通夜や告別式にかかった費用は遺産総額から差し引くことが可能です(相続税法第13条)。ただし、香典返しや法要の費用は控除対象外となるため注意する必要があります。

相続税の申告と納税に関する原則的な期限

相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。期限までに申告と納税を完了しないと、加算税や延滞税といったペナルティが課されるおそれがあります(国税庁タックスアンサーNo.4205)。

基礎控除額の具体的な計算手順と早見表

基礎控除額は、法律で定められた計算式に法定相続人の数を当てはめて算出します。遺産総額がこの金額を超えているかどうかを確認することが、相続税手続の最初のステップとなります。

法定相続人の数による基礎控除額の違い

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します(相続税法15条1項)。法定相続人の数が増えるほど基礎控除額は大きくなり、非課税となる枠が広がる仕組みです。

法定相続人の数基礎控除額の計算式基礎控除額
1人3,000万円 + 600万円 × 1人3,600万円
2人3,000万円 + 600万円 × 2人4,200万円
3人3,000万円 + 600万円 × 3人4,800万円
4人3,000万円 + 600万円 × 4人5,400万円

💡 プロが教える!実務のワンポイント

相続放棄をした相続人がいる場合の人数カウントが大きなポイントです。民法上は相続放棄をすると最初から相続人ではなかった扱いになります。しかし、相続税法上の基礎控除を計算する際は、放棄がなかったものとして法定相続人の数に含めます(相続税法第15条第2項)。この違いにより基礎控除額は減少しません。

土地の相続税評価額を調べる2つの評価方式

土地の相続税評価額は、実際の売買価格(時価)とは異なり、国税庁が定める財産評価基本通達に基づいて計算します。評価方式は路線価方式と倍率方式の2種類が存在します。

路線価が定められている地域に適用される路線価方式

路線価が定められている地域の土地は、道路ごとに設定された路線価をもとに計算します(財産評価基本通達11)。「路線価×奥行価格補正率等の各種補正率×地積(面積)」の計算式で求めます(国税庁タックスアンサーNo.4604)。

路線価が定められていない地域に適用される倍率方式

路線価が定められていない地域の土地は、倍率方式で評価します(財産評価基本通達21-2)。「固定資産税評価額×地域ごとに定められた評価倍率」で計算し、形状による補正計算は行いません(国税庁タックスアンサーNo.4606)。

貸宅地や貸家建付地における評価額の減額計算

借地権の目的となっている土地や賃貸アパートが建っている土地は、自由に使えないため評価額が下がります(財産評価基本通達25、26)。アパート等の敷地である貸家建付地(かしやたてつけち)は「自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で算出します。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

税務の取扱いとしては、相続開始日における現実の賃貸割合の判定が重要です。アパートに一時的な空室がある場合でも、継続的に賃貸されていた部屋で、退去後速やかに入居者を募集し、空室期間が一時的であるなどの条件を満たせば、賃貸されていたものとして扱える場合があります(財産評価基本通達26注記)。課税時期の利用状態と空室期間の事実関係を証明する資料の保存が評価の分かれ目となります。

土地の相続税を大きく減らす重要な特例と軽減措置

土地の相続では、要件を満たすことで評価額や税額を大幅に軽減できる制度が用意されています。制度の適用には適用要件の把握と正確な手続きが必要です。

評価額を最大80パーセント減額できる小規模宅地等の特例

一定の要件を満たす自宅や事業用の土地を相続する場合、一定の面積まで評価額を最大80%減額できます(租税特別措置法第69条の4)。自宅の土地(特定居住用宅地等)は、一定の要件を満たすと330平方メートルまで80%減額が可能です(国税庁タックスアンサーNo.4124)

宅地の区分主な適用要件限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人の自宅用地(配偶者または一定の同居親族等が取得)330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人の事業用地(親族が事業を承継し申告期限まで継続)400㎡80%
貸付事業用宅地等アパート等の賃貸事業用地(親族が事業を承継し申告期限まで継続)200㎡50%

1億6000万円まで無税になる配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者は、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかかりません(相続税法第19条の2)。残された配偶者の生活に配慮した制度です(国税庁タックスアンサーNo.4158)。

特例適用における申告期限と手続き上の注意点

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用して税額が0円になる場合でも、特例の適用を受けるためには相続税の申告書を提出し、必要書類を添付する必要があります(相続税法第19条の2第3項、租税特別措置法第69条の4)。申告書を提出しなければ、これらの特例の適用を受けることはできません。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

申告期限までに遺産分割協議が整わないケースでの対応が判断の分かれ目となります。期限内に未分割のまま申告する場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書とともに提出しておき、原則として申告期限から3年以内に分割したときは、分割後に更正の請求をすることで特例を適用できます(租税特別措置法第69条の4第7項)。

土地の相続税に関するFAQ

Q1:土地しか財産がない場合でも相続税は現金で納める必要がありますか?

相続税は原則として金銭で一括納付する必要があります(相続税法第33条)。金銭での納付が困難な場合は、税務署に申請して年払いにする延納制度(相続税法第38条)や、相続した土地そのものを納める物納制度(相続税法第41条)を利用できる場合があります。ただし、物納には厳しい要件が定められているため事前確認が必要です。

Q2:土地の路線価や固定資産税評価額はどこで確認できますか?

路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で閲覧できます(財産評価基本通達11)。固定資産税評価額は、毎年春頃に届く固定資産税の課税明細書で確認可能です。手元にない場合は、都税事務所や市区町村役場で固定資産税評価証明書を取得して確認します。

Q3:相続税の申告期限までに土地の分割が決まらない場合はどうすればよいですか?

申告期限までに遺産分割が完了しない場合は、一旦法定相続分で分割したものと仮定して申告と納付を行います(相続税法第55条)。その際、「申告期限後3年以内の分割見込書」をあわせて提出しておき、原則として申告期限から3年以内に分割が成立した場合は、更正の請求をすることで、小規模宅地等の特例などを適用して税金の還付を受けられる場合があります。

Q4:小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになれば申告は不要ですか?

小規模宅地等の特例を適用して相続税額がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるためには相続税の申告書の提出が必要です(租税特別措置法第69条の4、国税庁タックスアンサーNo.4124)。申告書に特例の適用を受けようとする旨を記載し、必要書類を添付することが要件となっています。

相続の不安は税理士へ相談を

土地の評価計算や特例の適用判定を自己判断で行うと、申告漏れや過大な納税につながるリスクがあります。複雑な土地評価や税額計算は専門的な知識を要するため、相続税に精通した税理士へ相談することをおすすめします。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)