相続税の物納は現金で納付が困難なときに選べる制度ですか?
延納でも金銭納付が困難な場合に限り物納制度を選択できます。
相続税は原則として現金で一括納付することが決められています。しかし、現金での納付が難しい場合は、まず分割払いの「延納」を検討することになります。延納によっても金銭で納付することが困難な金額を限度として、相続した財産を国に納める「物納」の利用が認められます。2026年現在の税制では、相続税法第41条に基づき、申告期限である10か月以内に税務署へ申請する必要があります。
相続税の物納制度の概要と延納との違い
物納とは、現金に代えて相続した土地や株式などの財産そのものを国に納める手続きです。相続税法第41条に定められた納税方法であり、最初から任意に選べるわけではありません。まずは現金での一括納付、次に分割払いである延納を検討します。それでも支払いが難しい場合に初めて認められる最終手段となっています。
物納で支払う際の手続き期限
物納の申請は、被相続人(亡くなった方)の死亡を知った日の翌日から10か月以内の申告期限までに行う必要があります。期限までに物納申請書と関係書類を税務署長へ提出します。書類の準備が間に合わないときは、届出により物納手続関係書類の提出期限を最長1年まで延長できます(国税庁タックスアンサーNo.4214)。
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物納を検討する際は、延納(分割払い)の可能性を先に審査される点が重要です。現金納付が困難な理由を提出書類で具体的に示す必要があります。また、手続書類の提出期限は最長1年延長できますが、審査期間中や書類補正の期間には利子税が発生する場合があります。税務上の不利益を防ぐため、早めの書類準備が欠かせません。
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物納が認められるための4つの基本要件
物納の許可を得るには、国税庁が定める4つの要件をすべて満たす必要があります。要件を1つでも欠かすと申請は却下されます。
| 物納の要件 | 内容の詳細 |
|---|---|
| 金銭納付の困難性 | 延納によっても金銭での納付が困難な金額の範囲内であること |
| 申請財産の対象と順位 | 課税価格の計算基礎となった日本国内の財産で規定の順位によること |
| 申請期限の遵守 | 納期限までに物納申請書と手続関係書類を税務署へ提出すること |
| 財産の適格性 | 管理処分不適格財産に該当せず、物納劣後財産の場合は他に適当な財産がないこと |
金銭納付が困難な金額の限度
物納できる金額は、金銭で納付することが困難な額が上限となります。手持ちの現金や将来の確実な収入で払える分は、現金で納めなければなりません。所有する全財産を自由に物納できるわけではないため注意が必要です。
物納財産の所在と対象範囲
物納に充てることができる財産は、日本国内に所在するものに限られます。また、相続税の課税価格を計算する基礎となった相続財産の中から選ぶ必要があります。生前贈与で取得した財産などは対象になりません。
物納できる財産の種類と優先順位
物納に充てられる財産は、法律で優先順位が指定されています。相続税法第41条により、先順位の財産に適当な価額のものがない場合などに限り、後順位の財産を充てることができます。
| 物納順位 | 対象となる財産の種類 |
|---|---|
| 第1順位(1) | 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等 |
| 第1順位(2) | 不動産および上場株式等のうち物納劣後財産に該当するもの |
| 第2順位(3) | 非上場株式等 |
| 第2順位(4) | 非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
| 第3順位(5) | 動産 |
上場株式と不動産の順位
2017年4月以降の税制改正により、上場株式は第1順位に分類されています。不動産と同等の順位として扱われますが、国にとって管理や処分が容易な財産から優先して検討されます。
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借地人に貸している土地(貸宅地)は、更地(じようち)と比べて市場での売却価格が低くなる傾向があります。しかし税務上は第1順位の不動産として、相続税評価額で物納することが認められます。市場での売却手取額が相続税評価額を下回る場合は、第三者への売却よりも物納を選択するほうが税務面で有利になる判断の分かれ目となります。
特定登録美術品の特例措置
重要文化財などの特定登録美術品については、定められた優先順位にかかわらず物納に充てることができます。一定の証明書類を添えて申請することで、特別扱いが認められています。
物納が認められない管理処分不適格財産
国が引き取った後に管理や処分が困難な財産は「管理処分不適格財産」と呼ばれ、物納できません。相続税法第41条第2項に基づき、担保権が設定された不動産や境界が不明確な土地などが該当します。
物納不適格となる主な土地や建物
権利関係で争いがある不動産や、隣地との境界が決まっていない土地は対象外です。また、耐用年数を経過して通常の使用ができない建物や、公道に通じていない土地で通行権の内容が明確でないものも国に納めることはできません。
物納不適格となる株式やその他の財産
株式においても、譲渡制限が付いている株式や共有名義の株式(全員申請を除く)は物納できません。質権などの担保権が設定されている株式も対象から除外されます。
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境界が曖昧な土地を物納申請する場合、隣地所有者との「境界確定合意書」や実測図の提出が原則として必要です(山林などでは実測図を省略できる場合があります)。測量や境界確認の不備があると管理処分不適格財産と判定され、申請が却下されます。却下通知を受け取った日の翌日から20日以内であれば1回に限り再申請が可能ですが、事前に土地の境界や権利関係を整備しておくことが適格性を証明する決定打となります。
後回しにされる物納劣後財産とは
他に適当な財産がない場合に限り物納が認められる財産を「物納劣後財産」といいます。管理や処分に一定の制限があるため、通常の財産より優先順位が下に置かれます(国税庁タックスアンサーNo.4214)。
不動産における劣後財産の具体例
建築基準法第43条第1項の道路に2メートル以上接していない土地や、自ら居住・事業に利用している建物などが当てはまります。地上権や、耕作を目的とする賃借権が設定されている土地も劣後財産に含まれます。
農地や森林などの利用制限がある土地
農業振興地域の農用地区域内にある土地や、森林法の保安林に指定された土地も劣後財産です。これらの財産は、他に物納できる適当な財産がない場合のみ国に納めることができます。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
小規模宅地等の特例を適用した土地を物納する場合、収納価額(国が引き取る価格)は特例適用後の減額された評価額となります(相続税法第43条)。時価よりも著しく低い金額で収納されるため、特例適用地は物納するよりも市場で売却して現金で納税したほうが手元に残る資金が多くなる場合があります。
相続税と物納に関するFAQ
原則として、相続税の課税価格の計算基礎となった評価額が収納価額となります。相続開始時の路線価や固定資産税評価額をもとに計算された金額です。小規模宅地等の特例を適用した土地の場合は、減額後の評価額が収納価額となります(相続税法第43条)。
物納申請した財産が管理処分不適格財産や物納劣後財産と判断されて却下されたときは、却下通知を受けた日の翌日から20日以内に限り、代わりの財産による物納の再申請を1回だけ行えます。また、延納によって納付できると判断されて却下された場合は、同じく20日以内に延納(分割払い)への変更申請が可能です(相続税法第44条・第45条)。
延納の許可を受けた後、資金繰りの悪化などで延納条件を変更しても分割納付が困難になった場合は「特定物納制度」を利用できます。申告期限から10年以内に限り、未到来の分納税額について延納から物納へ変更できます(相続税法第48条の2第1項)。
物納の申請から許可までの期間中、書類の訂正や整備に要した期間に対して利子税が発生する場合があります(相続税法第53条)。また、自身で申請を任意取り下げした場合は、納期限の翌日から延滞税が課されるため、計画的な準備が必要です。
相続の不安は税理士へ相談を
物納は要件の確認や必要書類の準備が極めて複雑です。自己判断で手続きを進めると、管理処分不適格と判定されて申請が却下されたり、不必要な利子税が発生したりするリスクがあります。納税方法の選択や財産の事前整備については、税理士などの専門家へ速やかにご相談ください。
