マンションを相続したら相続税はいくら?新ルールの計算や節税策はありますか?
マンションの相続税は遺産総額と評価額で決まり控除で0円になる場合もあります。
マンションの相続税は、建物と土地の評価額を算出し、遺産総額に応じて計算します。2024年(令和6年)1月1日以降の相続では、対象となる居住用の区分所有財産について、国税庁の新ルールにより区分所有補正率を用いて評価する場合があります。遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば税金はかかりません。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の活用で税額が0円になる場合もありますが、その場合でも相続税の申告が必要です。
マンション相続税評価額の2024年新ルールとは
従来の評価方法と時価の差による見直しの背景
従来、マンションの相続税評価額は時価よりも大幅に低く評価されていました。特に高層階のタワーマンションでは、時価の3割から4割程度になるケースがありました。この乖離を利用した節税が過度に行われたため、課税の公平性を保つ目的で見直しが行われました。国税庁は法令解釈通達を改正し、評価額を最低でも時価の6割程度まで引き上げる新ルールを導入しました。
新ルールが適用されるマンションの条件
新ルールは、居住の用に供する専有部分がある、地階を除く総階数3階以上の区分所有建物に適用されます。分譲マンションの多くが対象となります。一方で、事業用のテナント物件や、区分建物の登記がされていない一棟所有の賃貸マンションには適用されません。また、地階を除く総階数が2以下の低層集合住宅や、居住の用に供する専有部分一室の数が3以下で、そのすべてを区分所有者またはその親族の居住の用に供している物件も対象外となります。自身の物件が該当するか確認が必要です。(No.4667 居住用の区分所有財産の評価|国税庁)
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一棟所有の賃貸マンションや二世帯住宅などは新ルールの対象外ですが、区分所有登記がされている場合は対象となることがあります。建物の登記構造や利用形態によって適用関係が分かれるため、登記簿謄本の表題部で区分所有権が設定されているかを事前に確認することが重要です。
新ルールで使われる区分所有補正率の計算手順
新ルールでは、従来の方法で出した評価額に区分所有補正率を掛けます。まず、築年数や階数などの要素から評価乖離率を計算します。次に、1を評価乖離率で割って評価水準を求めます。評価水準が0.6未満の場合は、評価乖離率に0.6を掛けた値が補正率になります。評価水準が0.6以上1以下の場合は補正を行わず、1を超える場合は評価乖離率がそのまま補正率となります。
区分所有補正率を決める4つの評価要素
補正率を決める評価乖離率は、4つの要素に3.220を加えて計算されます。築年数、総階数指数、専有部分の所在階、敷地持分狭小度の4つです。築年数が古いほど評価を下げる効果があります。総階数が高いほど、また所在階が高層階であるほど評価を引き上げる効果が働きます。敷地持分が狭い場合も評価が上がります。これらの統計的データをもとに、時価との乖離を適正に補正します。
| 評価要素 | 計算式 | 評価額への主な影響 |
|---|---|---|
| A 築年数 | 築年数 × △0.033 | 古いほど評価を下げる |
| B 総階数指数 | (総階数 ÷ 33、1を超える場合は1) × 0.239 | 高層建築ほど評価を上げる |
| C 所在階 | 所在階 × 0.018 | 高層階ほど評価を上げる |
| D 敷地持分狭小度 | (敷地利用権面積 ÷ 専有面積) × △1.195 | 持分が狭いほど評価を上げる |
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自用マンションの相続税評価額を計算する手順
建物部分(専有部分)の評価額の計算方法
自分が住んでいた自用マンションの建物部分は、固定資産税評価額をもとに計算します。具体的には、市区町村から送られる固定資産税課税明細書の「価格」または「評価額」欄の数値に1.0を乗じます。課税標準額とは異なりますので注意してください。専有部分の評価額には、エントランスや廊下などの共用部分を住戸ごとに按分した価額もあらかじめ含まれています。
土地部分(敷地利用権)の評価額の計算方法
土地部分は、マンション全体の敷地評価額に敷地権割合を掛けて算出します。敷地全体の評価は、路線価が定められている地域では路線価方式、路線価が定められていない地域では倍率方式を使います。路線価方式では、国税庁が公表する路線価に敷地面積を掛け、そこに登記事項証明書に記載された敷地権割合を乗じます。こうして出した補正前の土地評価額に、区分所有補正率を掛けることで最終的な相続税評価額を算出します。(相続税法第22条)
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敷地利用権の評価では、路線価に奥行補正や形状補正が必要な場合があります。また、敷地が広大な場合は財産評価基本通達による「地積規模の大きな宅地の評価」が適用できるケースもあります。補正の有無で評価額が大きく変わるため、専門家による現地確認や減額要素の判定が必要です
国税庁のエクセルツールを用いた補正率の試算
区分所有補正率の計算は複雑ですが、国税庁が公表している専用のエクセルツールを使うと便利です。(B2-6 居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書|国税庁)「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」に必要事項を入力します。登記事項証明書から、築年数、総階数、所在階、専有面積、敷地面積、敷地権割合の6項目を転記します。数値を正しく入力すれば、自動で補正率が算出されます。
タワーマンション高層階の評価額シミュレーション
都心のタワーマンション高層階を例に試算します。実勢価格2億円、従来の評価額が4,500万円(土地3,000万円、建物1,500万円)の物件とします。新ルールで評価乖離率が3.7と算出された場合、評価水準は約0.27となり0.6未満です。補正率は約2.22となり、新評価額は約1億円へ引き上がります。従来より評価額が2倍以上になり、実勢価格の約50%となります。
賃貸マンションを相続したときの評価額計算
区分所有の1室を賃貸している場合の計算
第三者に賃貸しているマンション1室を相続した場合、自用よりも評価額が下がります。借主の権利(借家権)が発生し、所有者の自由な利用が制限されるためです。建物は「自用評価額×(1-借家権割合30%)」で評価します。土地は「自用評価額×(1-借地権割合×借家権割合30%)」で算出します。借地権割合は地域ごとに30%から90%の間で定められています。
一棟マンションを所有して賃貸している場合の計算
一棟まるごと賃貸マンションを所有している場合は、貸家および貸家建付地として評価します。計算式には賃貸割合が加わります。建物の評価額は「固定資産税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合)」となります。土地の評価額は「自用評価額×(1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)」です。賃貸割合が高いほど評価額が下がり、節税効果が高まります。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
相続発生時に空室があっても、課税時期前に継続して賃貸されており、退去後すぐに募集を行い、空室期間が一時的で、他の用途に使っていないなどの事情から一時的な空室と認められる場合は、賃貸割合に含めることができます。賃貸契約書や入居募集の広告履歴など、賃貸の状況を確認できる資料を保存しておきましょう。
満室時と空室がある場合での賃貸割合の扱い
賃貸割合は、各部屋の床面積のうち実際に課税時期(相続開始日)において賃貸されている面積の割合です。満室であれば賃貸割合は100%となり、評価額を最も低く抑えられます。一方で、退去後に放置されていた部屋や、自用で使っている部屋がある場合は賃貸割合が下がります。空室の期間や状態によって判断が分かれるため、実務上の適切な判定が必要です。
| 利用形態 | 建物部分の評価方法 | 土地部分の評価方法 |
|---|---|---|
| 自用マンション | 固定資産税評価額 × 補正率 | 路線価による評価 × 補正率 |
| 賃貸区分マンション | 自用評価 × (1-借家権割合30%) | 自用評価 × (1-借地権割合×30%) |
| 賃貸一棟マンション | 固定資産税評価額 × (1-30%×賃貸割合) | 自用評価 × (1-借地権割合×30%×賃貸割合) |
マンション相続で税金がかからないケースと活用できる特例
遺産総額が基礎控除額以下なら税金はかからない
相続税には基礎控除があり、正味の遺産総額が基礎控除額以下であれば税金は発生しません。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算します。たとえば法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円です。マンション評価額や預貯金などを合わせた金額が4,200万円以下であれば、相続税の申告も納税も一切不要となります。
| 法定相続人の人数 | 基礎控除額 | 主な相続人の組み合わせ例 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 配偶者のみ、または子1人 |
| 2人 | 4,200万円 | 配偶者と子1人 |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者と子2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者と子3人 |
小規模宅地等の特例で土地評価額を80%減額
被相続人が自宅として使っていたマンションの土地部分は、取得者などの要件を満たせば、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等・租税特別措置法第69条の4)を適用できます。この特例を使うと、330平方メートルまでの敷地利用権の評価額が80%減額されます。区分マンションは敷地権面積が小さいため、限度面積内に収まることがほとんどです。
💡 プロが教える!実務のワンポイント
同居していた親族が小規模宅地等の特例を受けるには、相続税の申告期限までそのマンションに住み続け、所有し続ける必要があります。別居の親族(いわゆる家なき子)が適用を受ける場合は、被相続人に配偶者や同居相続人がいないことや、相続開始前3年以内に本人・配偶者・三親等内の親族・一定の関係法人が所有する国内の家屋に住んでいないことなどの要件があります。
配偶者の税額軽減で1億6,000万円まで非課税
配偶者が取得する遺産については、配偶者の税額軽減という特例があります。配偶者が受け取る財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。居住用マンションを配偶者が相続する場合、多くはこの枠内に収まり税額が0円になります。適用を受けるには、相続税法第19条の2に基づき申告書を提出することが要件です。
マンション相続で知っておくべき名義変更と申告の手続
相続登記(名義変更)の義務化と申請期限
マンションを相続したら、不動産の名義を変更する相続登記が必要です。2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。登記の際には固定資産税評価額の0.4%相当の登録免許税が課されます。
相続税の申告期限と納税が難しい場合の対処法
相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税がかかります。相続税額が10万円を超え、金銭での一括納付が難しい場合は、原則として担保を提供して分割で納める延納という手続があります(延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は担保不要)。延納でも納付が困難な場合に限り、一定の相続財産で納める物納が認められます。いずれも税務署長の許可が必要です。
マンションの相続税に関するFAQ
マンション1室のみの相続でも、土地と建物の評価額に預貯金などを加えた遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えれば申告が必要です。基礎控除以下であれば申告は不要です。
路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。固定資産税評価額は、自治体から送付される固定資産税の課税明細書や、市区町村で取得できる固定資産評価証明書などで確認できます。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用して税額が0円になる場合でも、特例の適用を受けるために相続税の申告書等の提出が必要です。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
金銭での一括納付が難しい場合は、税務署に申請して分割払いにする延納や、物件を売却して納税する方法があります。事前に対策が可能な場合は、生前贈与や土地評価の見直しを検討することが有効です。
相続の不安は税理士へ相談を
マンションの相続税評価は、2024年の新ルール導入により非常に複雑化しています。計算ミスや特例の適用漏れがあると、余分な税金が発生するリスクがあります。適正な評価額の算出やスムーズな申告を進めるためにも、自己判断を避け、相続手続きに詳しい税理士への相談をおすすめします。
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