贈与税の計算方法は?110万円の基礎控除と税率の違いを具体例で解説

贈与税の110万円基礎控除を賢く使う方法を解説。110万円を引く計算や、活用例、注意点などを紹介します。

暦年課税では、1年間にもらった財産の合計額から110万円を差し引いて贈与税を計算します。110万円の基礎控除は誰でも同じですが、税率は贈与する人との関係や、もらう人の年齢によって異なります。

2026年現在の法令において、暦年課税の贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの金額に税率をかけて計算します(相続税法第21条の2、租税特別措置法第70条の2の4)。1年間に受け取った財産の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です。

贈与税の基本的な計算手順と計算式

贈与税の計算は、1年間(1月1日〜12月31日)に贈与でもらった財産の価額をすべて合計することから始まります(国税庁タックスアンサーNo.4408)。複数の人から贈与を受けたときは、その全員からの受取額を合計します。

課税価格を求める基礎控除の差し引き

もらった財産の合計額から、基礎控除額である110万円を差し引きます。この差し引いた後の金額を「課税価格」と呼びます。計算式は「1年間の贈与財産合計額-110万円=課税価格」です。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

110万円の基礎控除は「あげる人」ではなく「受け取る人」単位で適用されます。例えば父親から100万円、母親から100万円を同年に受け取ると合計200万円となり、110万円を超えた90万円に課税されます。あげた人ごとに110万円を引けるわけではない点に注意が必要です(租税特別措置法第70条の2の4)。

贈与税の税率と区分

贈与税の税率は、あげる人と受け取る人の関係、受け取る人の年齢によって2種類に分かれます。課税価格が高くなるほど税率が高くなる累進税率が採用されています。

一般贈与財産と一般税率が適用されるケース

兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から未成年の子への贈与などは「一般贈与財産」にあてはまります(国税庁タックスアンサーNo.4408)。一般税率を用いて税額を計算します。

特例贈与財産と特例税率が適用されるケース

直系尊属(父母や祖父母など)から、その年の1月1日時点で18歳以上の子や孫へ贈与するときは「特例贈与財産」になります。一般税率より税負担が軽くなるように設定されています。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

特例税率が適用されるかの年齢判定は、贈与を受けた日ではなく「その年の1月1日現在」の満年齢で行います(租税特別措置法第70条の2の5)。例えば12月に18歳の誕生日を迎えた場合でも、その年の1月1日時点で17歳であれば一般税率が適用されます。受贈者の生年月日の確認が境界線となります。

贈与税の速算表

税額の計算には、国税庁が公表している速算表を使用すると便利です。基礎控除後の課税価格に対応する税率をかけ、控除額を差し引いて求めます。

一般贈与財産用の速算表

一般贈与財産に適用される税率と控除額の区分です。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%–
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

課税価格が大きくなるにつれて、税率が10%から最高55%まで段階的に上がります(国税庁タックスアンサーNo.4408)。

特例贈与財産用の速算表

直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与に適用される税率と控除額です。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%–
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

特例税率では税率の上がる区分が緩やかになっており、控除額も一般税率より大きく設定されています。

具体例でわかる贈与税の計算パターン

実際の金額にあてはめて贈与税の計算例を確認します。年間500万円の贈与を受けたケースで比較します。

夫婦間で500万円の贈与を受けた場合の計算例

夫婦間の贈与は一般贈与財産になります(国税庁タックスアンサーNo.4408)。500万円から110万円を引いた390万円が課税価格です。一般税率の20%をかけて25万円を引くと、贈与税額は53万円となります。

父親から18歳以上の子へ500万円の贈与を受けた場合の計算例

父親から18歳以上の子への贈与は特例贈与財産になります(国税庁タックスアンサーNo.4408)。500万円から110万円を引いた390万円に対し、特例税率の15%をかけて10万円を引くと、贈与税額は48.5万円となります。一般贈与より4.5万円低くなります。

一般財産と特例財産を両方受け取った場合の計算例

配偶者から100万円、実の親から400万円を同年に受け取った場合は按分計算を行います。500万円に一般税率と特例税率をそれぞれ当てはめた税額を求め、それぞれの財産割合をかけて合計します(租税特別措置法第70条の2の5)。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

計算によって贈与税額が発生したときは、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに申告と納付を行う必要があります(相続税法第28条)。申告期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課されるため、期限前の手続完了が求められます。手続の遅れは不要なペナルティの原因となります。

暦年課税と相続加算の注意点

暦年課税で生前贈与を行う場合、相続開始前の贈与が相続税の計算に取り込まれるルールがあります。

相続開始前7年以内の贈与加算ルール

相続などで財産を取得した人への贈与について、2024年1月1日以降の贈与から相続財産への加算期間が3年から7年へ段階的に延長されています(相続税法第19条)。2026年中の相続では3年以内の贈与が対象です。延長された4年分については合計100万円まで控除できます。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

贈与の成立を示すには、贈与契約書や銀行振込の履歴を残しておくことが大切です。親が資金を出し、名義だけを子や孫にした「名義預金」と判断されると、相続財産に含められることがあります。毎年お互いの意思を確認し、書面や口座記録を残しましょう。

贈与税の計算に関するFAQ

Q1:1年間で複数の人から贈与された場合、110万円の基礎控除はそれぞれ使えますか?

使えません。基礎控除額110万円は、受贈者(もらった人)1人につき年間110万円です。何人から贈与を受けても合計額から110万円を引いて計算します(租税特別措置法第70条の2の4)。

Q2:贈与税の計算で110万円以下なら確定申告は不要ですか?

不要です。暦年課税で1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計が110万円以下であれば、贈与税の申告も納税も必要ありません。ただし、相続時精算課税を初めて選ぶ場合は、届出書の提出が必要です。

Q3:配偶者から生活費を受け取った場合も贈与税の計算に含めますか?

通常の生活費や教育費であれば含めません。夫婦や親子などの扶養義務者間でお互いに生活に必要な費用をその都度渡す場合は、非課税財産として扱われます(相続税法第21条の3)。

Q4:18歳未満の子が祖父母から贈与を受けた場合は特例税率で計算できますか?

特例税率は使えず、一般税率で計算します。直系尊属からの贈与であっても、その年の1月1日時点で受贈者が18歳未満の場合は一般贈与財産に該当します(国税庁タックスアンサーNo.4408)。

Q5:贈与税は分割して納めることができますか?

一定の条件を満たせば延納を選択できます。贈与税の納付は原則として一括現金納付ですが、納付額が10万円を超え納期限までに納められない場合は、5年以内の延納手続が可能です(国税庁タックスアンサーNo.4429)。

相続の不安は税理士へ相談を

生前贈与の計算や制度選びを自己判断で行うと、意図しない税金が発生したり、相続発生時に名義預金と判定されたりするリスクがあります。正しく節税効果を得るためには、相続税法や通達に精通した税理士へ事前に相談することをお勧めします。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)