親や祖父母からの贈与で税金が安くなる特例税率とは?

親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に適用される「特例税率」の仕組みや一般税率との違いを分かりやすく解説。

特例税率とは18歳以上の子や孫が親や祖父母から贈与を受けると税金が安くなる制度です。

特例税率とは、直系尊属からの贈与に適用され、贈与額によって一般税率より低い税率が設定されています。2026年時点の税制では、基礎控除110万円を超えた部分に適用されます。110万円の基礎控除は租税特別措置法第70条の2の4、特例税率は租税特別措置法第70条の2の5が根拠法令です。

贈与税の特例税率と一般税率の違い

特例税率の基本概念と対象者

直系尊属である父母や祖父母から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子や孫へ財産を渡すときに適用される税率です。配偶者の親からの贈与や、義理の父母からの贈与には適用できません。

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要件の境界線:配偶者の父親や母親から財産をもらった場合、直系尊属からの贈与にあてはまらないため特例税率は使えません。養子縁組をしている場合は直系尊属にあたるため特例税率が適用されます。受贈者の年齢判定は贈与日ではなく「その年の1月1日時点」で行う点に気をつける必要があります。

一般税率が適用される主なケース

兄弟姉妹間の贈与や夫婦間の贈与、友人からの贈与に適用されます。また、親から子への贈与であっても、受け取る子がその年の1月1日時点で18歳未満である場合は一般税率となります。

特例税率が適用されるための3つの条件

条件1:贈与者が直系尊属であること

贈与する人が実の父母や祖父母、ひいおじいさんやひいおばあさんなどの直系尊属であることが求められます。伯父や叔母、配偶者の親からの贈与は直系尊属にあたらないため対象外です。

条件2:受贈者が贈与年の1月1日時点で18歳以上であること

財産を受け取る人が、贈与があった年の1月1日現在で18歳以上である必要があります。年の途中で18歳になった場合でも、1月1日時点で17歳であればその年は特例税率を使えません。

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手続の順序と期限:1月生まれの方が18歳になった年に贈与を受ける場合でも、その年の1月1日現在で17歳であれば一般税率が適用されます。誕生日を迎えて成人していても、税務上の年齢判定は「1月1日時点」で固定されるため、贈与を実行するタイミングを翌年以降にずらす判断が必要です。

条件3:暦年課税を選択していること

特例税率は暦年課税の税率構造です。相続時精算課税制度を選択した場合は、一律20%の税率となるため暦年課税の特例税率は使わなくなります。

特例税率と一般税率の速算表

特例税率の速算表

直系尊属から18歳以上の子や孫へ贈与した場合の税率と控除額は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

110万円の基礎控除を差し引いた後の金額をあてはめて計算します。国税庁タックスアンサーNo.4408に定められている基準です。

一般税率の速算表

特例税率の対象にならない贈与に適用される税率と控除額は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

課税価格が300万円を超える区分から、特例税率よりも高い税率や低い控除額が設定されています。

両税率の税額比較

特例税率と一般税率の税額差を示す比較は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格特例税率の税額一般税率の税額税額の差額
300万円35万円35万円0円
500万円70万円85万円15万円
1,000万円210万円275万円65万円
2,000万円635万円750万円115万円

金額が大きくなるほど特例税率による節税効果が高くなります。

贈与税額の具体的な計算手順と計算例

計算手順の基本ステップ

暦年課税での税額計算は3つの手順で行います。まず1年間に贈与でもらった財産を合計します。次に基礎控除額110万円を引きます。最後に残った金額へ該当する税率をかけて控除額を差し引きます。

計算例1:祖父から20歳のお孫さんへ500万円を贈与した場合

贈与額500万円から基礎控除110万円を引くと390万円になります。特例税率の速算表にあてはめると税率は15%、控除額は10万円です。計算式は390万円×15%-10万円となり、贈与税額は48万5,000円です。

計算例2:特例贈与と一般贈与の両方を受けた場合

父から400万円、叔父から100万円をもらった場合はあん分計算を行います。合計500万円から110万円を引いた390万円をベースに、全体を一般税率で計算した税額と特例税率で計算した税額をそれぞれ出し、もらった金額の割合に応じて合計します。

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誤解が生じやすい論点:父母と叔父の両方から同じ年に贈与を受けた場合、基礎控除110万円をどちらか片方にだけ適用することはできません。全体の合計額から110万円を控除したうえで、特例財産と一般財産の比率に応じて税額をあん分計算するルール(租税特別措置法第70条の2の5)になっています。

特例税率を活用して贈与税を抑えるためのポイント

ポイント1:複数年に分けて贈与を行う

一度に大きな金額を贈与すると高い税率が適用されます。数年に分けて贈与することで、毎年110万円の基礎控除を使いながら低い税率の区分を維持して財産を移転できます。

ポイント2:申告期限と提出資料を確認する

贈与税の申告期間は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までです。特例税率を適用して申告する場合、基礎控除後の金額が300万円を超えるときは、戸籍謄本など贈与者と受贈者の関係および受贈者の年齢を証明する書類の添付が必要です(過去に同じ贈与者について提出済みなら省略可)。

💡 プロが教える!実務のワンポイント

過去に提出した書類の省略:以前の贈与税申告で同じ贈与者との続柄を証明する戸籍謄本などを提出している場合は、再提出を省略できます。その際は、申告書第一表の「過去の贈与税の申告状況」欄に、書類を提出した年分と税務署名を記入します。過去の申告書の控えを確認しておきましょう。

贈与の特例に関するFAQ

Q1:18歳未満の子に贈与する場合は特例税率を使えませんか?

18歳未満の子や孫への贈与には特例税率は適用されず、一般税率が適用されます。ただし、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であれば特例税率が使えます。税務上の年齢判定は誕生日ではなく「その年の1月1日時点」で判断する点に注意が必要です。

Q2:義理の父親から贈与を受けた場合は特例税率になりますか?

配偶者の父親は直系尊属にあたらないため、特例税率は適用できません。一般税率で計算することになります。ただし、義理の父と養子縁組を行っている場合は法律上の直系尊属となるため、特例税率の適用対象にあてはまります。

Q3:特例税率を適用する場合も申告書の提出は必要ですか?

1年間の贈与額が基礎控除額である110万円を超える場合は、特例税率が適用される場合でも申告が必要です。翌年の2月1日から3月15日までに税務署へ申告書と添付書類を提出して納付を行う必要があります。

Q4:特例税率は住宅取得資金贈与などの非課税特例と併用できますか?

併用可能です。住宅取得等資金の非課税制度などを利用し、非課税枠を超えた部分の金額に対して、直系尊属からの贈与であれば特例税率を適用して税額を計算できます。

相続の不安は税理士へ相談を

贈与税の特例税率は適用要件の確認やあん分計算など実務上の判断が複雑です。誤った税率で申告すると過少申告加算税などのリスクが生じます。税負担を正しく抑えるためには相続と贈与に詳しい税理士への相談をおすすめします。

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柏原 朋恵

監修者:税理士 柏原

商社での経理実務を経て、会計業界へ転身。税理士法人にて約20年にわたり、中小企業の決算・税務申告から、上場企業の連結納税、SPC業務まで幅広く従事。みつきコンサルティングではオーナー企業の事業承継や相続税・贈与税のアドバイスも提供。本記事では、長年の実務経験に基づき、内容の正確性と専門性を担保するため、専門家の視点から監修を行っている。(税理士登録番号:126165)