相続後のトラブルを防ぐ!遺産分割協議書の重要性と必要な場面

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相続が開始されるとき、相続人同士で話し合いが行われて相続財産の分割もスムーズに行われた場合に、遺産分割協議書は必要なのでしょうか。「もちろん答えは必要です」と専門家なら誰でもそう答えるでしょう。なぜなら書面に残しておかないと後々トラブルになる恐れがあるからです。

被相続人が遺言を残しておらず、かつ法定相続分以外の方法で遺産分割をする場合、遺産分割協議書が必要となります。

今回は、遺産分割協議書の必要性についてお話ししてみたいと思います。そもそも、なぜ遺産分割の協議を書面にしておく必要があるのでしょうか?

話し合いのやり直しの恐れ

しっかりと話し合いを行うことができ、尚且つ全員が納得しているときは問題ありません。しかし、時間の経過とともに「やっぱり…」と欲が出てきてしまう場合があります。そんな時、書面にしていなかった場合は法律的には口約束だけで証拠がないと判断される可能性があります。そして、再度分割の話し合いを行う必要が出てきてしまうのです。

相続登記に必要

相続財産に不動産がある場合の名義人変更(相続登記)を行う際に遺産分割協議書が必要となります。被相続人が持っていた財産は一時的に相続人の共有の財産です。分割協議で決定したとしても相続人が名義変更をした時に初めて相続人の所有物となります。
遺産分割協議書をすぐに作ることが難しい場合、相続人である旨の申し出等による登記(相続人申告登記)をすることができますが、相続人申告登記をしただけでは売却や贈与をすることができません。

相続税に関して

遺産分割協議書がない、もしくは協議が間に合わず申告する場合、税務署は相続財産の分配方法などが分からないため、法定相続分を使って相続税の計算を行います。相続人が法定相続分以下しか受け取っていない場合、余分に相続税を払うことにもなりかねません。また、払い過ぎた相続税は3年以内に申告すれば還付は受けられますが、やはりそのときにも遺産分割協議書が必要になります。配偶者の税額の軽減や小規模宅地の特例を受ける際にも、遺言書もしくは遺産分割協議書が必要です。

自動車や株の名義変更

自動車や株も相続財産に含まれます。例えば、自動車の名義変更は運輸支局に下記の物を提出します。
・遺産分割協議書
・自動車検査証
・戸籍謄本(被相続人と相続人全員が確認できるもの)
・車庫証明書
・相続人の印鑑証明

銀行預貯金の払い戻し

被相続人が死亡したことを銀行が知るに伝えると、その名義の口座は全て一旦凍結されます。これは他の相続人が勝手にお金を引き出さないようにするためです。通帳に残っている金額にもよるそうですが、相続人全員の委任状や払い出しの際には遺産分割協議書が必要になる可能性があります。口座凍結の解除の手続きには、遺言書もしくは遺産分割協議書が必要です。

最後に

遺産分割協議書は相続する上で重要な書類のひとつです。家の中の現金しか相続財産がなく、相続人全員が納得して揉めないという場合には必要ないのかもしれませんが、実際にはそんなケースはなかなか聞いたことがありません。時間が経てば考えが変わってしまったり、周囲の言葉で考えが変わってしまったりする人もいます。後々のトラブルを避けるためにも、遺産分割協議書を作成することは大切なことのひとつといえるのではないでしょうか。

相続の教科書 税理士編集部

みつきコンサルティングに所属する税理士を中心に構成されています。みつきコンサルティングは、多様な業界出身のコンサルタント、公認会計士、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士(一部提携)が、それぞれの専門性を発揮し、包括的な財務・税務アドバイザリーを全国で提供しています。