土地区画整理事業地の相続税対策|小規模宅地特例と生前贈与の活用

遺産相続 土地・建物 節税

相続税をなるべく節税しようと思っても、一般の方の知識だけではなかなか難しいのが実状です。
具体的な例でいうと、土地区画整理事業地内になっているような土地は節税が難しいです。
今回は、節税が難しいと言われている土地区画整理事業地内の土地がある場合でも節税を行う事が可能な方法を、実例を入れてご説明致します。

土地区画整理事業とは

公共施設(公園や道路)を整備・改善して利用者を増やす事業のことです。
公共施設などが少ない地域には、元々土地を持っている人(地権者)から少しずつ土地を提供してもらい、公共施設などを作る場合があります。この事業地内に土地がある場合は、節税が難しいと言われています。

菊池さんの場合

菊池さんは、祖父母と両親の3世代で同居しています。しかし、父親が祖父母よりも早くに亡くなりました。それにより、祖父母の面倒は母親が看るようになりました。また祖父も亡くなり祖母の年齢的にも相続の事について考えないといけないと思い、今回相談に来られました。菊池さんが相続するであろう財産は、祖父が引き継いだ自宅付近にある広大な土地がほとんどでした。

大部分を占める土地が土地区画整理事業の施工地区内にある場合

今回、祖母から受け取る土地は土地区画整理事業の施工地区内に指定された土地になっていました。
このような場合には事業の進捗状況により評価額の評価方法が変わります。
仮換地の指定がされた場合には仮換地の価額で評価します。ただし、仮換地の造成工事中で、工事完了まで1年超かかることが見込まれる場合は仮換地の価額の95%で評価します。なお、その仮換地について使用収益の開始ができず、造成工事が行われていない場合は従前の宅地の価額で評価します。

実際には、もし国からの許可がおり造成工事が始まれば、祖母の土地は、位置の変更や面積の減少をしなければなりません。さらには住居を建てようとしても木造程度のものでしか建てることが出来ず、鉄筋コンクリートなどのような頑丈なものは使えません。
また、移転や解体などをしなければならない状況に置かれることもあります。しかし、このまま土地を放置しておいても相続税がかなり掛かってしまうため、節税対策の方法を考えました。

小規模宅地の特例が使えるかどうかを調べる

祖母は公正証書遺言(公証役場で行う一番安全で確実に遺言を残すことが出来る方法)を残しており、娘(菊池さんの母親)に自宅を相続すると残しました。 現在は祖母と暮らしているので居住用宅地と認められ、小規模宅地の特例が適用されて節税することが出来ました。

<小規模宅地の特例とは>

住居はなくてはならないもので、自宅を所有する事で固定資産税などの税金が掛かります。多額の相続税が掛かると生活が出来なくなるという理由で、この制度が設けられています。

継続して居住及び保有している事など一定の条件がありますが、条件が揃っていると最大で80%の土地評価の減額が可能です。

収益物件は贈与する事で節税を行う

祖母から相続される財産のほとんどは土地でした。預貯金はほとんどなく、収益物件はアパートが2棟だけありました。税金の支払いを最小限に防ぐため、アパートを祖母から菊池さんに生前贈与してもらう方法をご提案しました。アパートなどの建物は固定資産税評価が基準となるために、現金で贈与するよりも安く贈与することができます。生前贈与をおこなったので、相続財産が減少しました。

アパートの贈与により菊池さんは家賃を受け取ることができ、その中から納税資金も貯めることができるようになりました。

最後に

今回は土地区画整理事業の施工地区になっていて、土地を利用した節税対策が難しい場合の節税方法に関して説明していきました。このような場合は小規模宅地の特例などを使い、親と住んでいる家などを節税対策として使っていくことをお勧め致します。また、相続財産が土地だけではない場合は、先に生前贈与する方法もありますので、状況に合わせた対策が必要です。
気になったことがあった場合は、専門家に相談することをお勧め致します。

相続の教科書 税理士編集部

みつきコンサルティングに所属する税理士を中心に構成されています。みつきコンサルティングは、多様な業界出身のコンサルタント、公認会計士、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士(一部提携)が、それぞれの専門性を発揮し、包括的な財務・税務アドバイザリーを全国で提供しています。