遺言には「公正証書遺言」「自筆署名遺言」「秘密証書遺言」という3種類の形式があり、そのうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、開封時に遺言書の正当性を確認する「検認」の手続きを踏む必要があります。では、検認とはどのような手続きなのでしょうか。詳しく説明します。
検認とは
相続が開始したときに、「自筆証書遺言」か「秘密証書遺言」のいずれかが見つかった場合に行う手続きのことです。法律上、この検認の手続きをせずに開封をしてはいけないということになっています。
検認の目的
なぜ、自筆証書遺言と秘密証書遺言では開封の際に検認の手続きを行わなくてはいけないのでしょうか。検認の目的として、以下の内容を確認する意味があります。
・遺言書の形状・状態
・内容の加除訂正などの状態
・日付と署名の確認
つまり、遺言書の封が破られていないかなどの形状や、内容に偽造や変造を思わせる不審な加除訂正がされていないか、作成した日付と署名が正しく記載されているかなどを確認し、遺言書を検認した日までに、該当の遺言書に何らかの不正が行われていないかなどを判断します。
また、検認後には、検認を行った峰の証明がつきますので、開封後の偽造も防止する役割があります。
公正証書遺言は検認がいらない
自筆証書遺言と秘密証書遺言では、検認の手続きを行う必要があるのですが、「公正証書遺言」に関しては、検認の手続きを行う必要はありません。なぜなら、公正証書遺言は遺言の内容を公的な文書を作成する専門家である公証人に作成してもらうものであり、作成した段階で、すでに内容に不備がなく、遺言が遺言者本人のものであると証明されている信頼度の高い遺言だからです。
注意点
・検認をせずに開封すると罰金が発生する。
公証人によって作成された公正証書遺言であれば、検認をせずに開封してもいいのですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、必ず検認の手続きをとるようにしましょう。もしも検認の手続きを踏まずに開封してしまうと、その遺言に書かれている内容は無効にはなりませんが、5万円以下の科料が科されてしまいます。
検認の申し立て方法
《ステップ1》
検認の申立書や、死亡した被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などを準備し、被相続人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所にそれらの書類一式を提出します。
書類を提出したりなどの手続きは、遺言書を発見した相続人、もしくは、遺言書の保管を依頼していた弁護士など、遺言書を保管し、管理していた人が行います。
《ステップ2》
家庭裁判所に書類を提出して申立を行うと、約1か月程度で検認を行う日についての通知書が相続人全員に送られます。
《ステップ3》
検認日には、検認の申立を行った人が遺言書をもって家庭裁判所に行き、遺言書を開封して検認の手続きをします。検認の手続きを実施する日にちを知らせる通知書は、相続人全員に郵送されますが、当日の立ち合いに関しては、必ず相続人全員で立ち会わなければならないというわけではありません。
検認の申立てを行った申立人のみの立ち合いでも大丈夫ですし、相続人全員で立ち会っても構いません。また、検認の当日に誰が立ち会うのかについて事前に申請などをする必要はないので、検認の申立人を含む、相続人どうしで話し合うなどして検認当日は申立人のみで立ち会うのか、相続人全員で立ち会うのかをきめるようにしてください。
《ステップ4》
検認の手続きが終わると、その遺言書には検認証明をつけてもらえるので、その後に不動産の名義変更など、様々な相続の手続きを行うことができるようになります。
申立人 | 遺言を発見した相続人 遺言を保管していた人 |
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申立先 | 遺言者(被相続人)が最後に住んでいた居住地を管轄する家庭裁判所 |
必要な書類 | 家事審判申立書 当事者目録 遺言者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本・除籍謄本 相続人全員の戸籍謄本 ※その他、遺言者の子どもが死亡していた場合や、相続人が存在していない場合などで必要な書類が増える。 |
費用 | 遺言書1通につき800円(収入印紙) 郵便切手(家庭裁判所によって不要な場合もある) |
最後に
自筆証書遺言と秘密証書遺言の開封時には検認を行う必要があります。検認をせずに遺言を開封してしまうと、罰金が科されてしまうことがあります。遺言を見つけた場合には、忘れずに検認の申し立てを行い、検認をするようにしましょう。